ITシステムの統一を目指す

江崎 第1は、公的保険ありきで成り立っている現在の健康・医療サービスを見直すことです。具体的には、これまで感染症を中心に疾患の原因や患部を特定し、これを「取り除く」ことを基本としてきた医療から、患者の生活管理を基本とする「予防」や「進行抑制」主体の医療にシフトさせることです。今や生活習慣病と老化に起因する疾患への対応に医科診療費の半分以上が使われています。これらは適切に生活を管理することができれば、予防や進行抑制が可能なのです。

 こうした健康・医療サービスのシフトに重要な役割を果たすのが民間保険です。公的保険は、あくまで病気の治療のために発生する費用を弁済することを目的としていますが、民間保険は合理的な事故リスクの軽減につながるのであれば、サービス内容を比較的柔軟に設計することができます。しかも、高い掛け金を払えばより充実したサービスを受けることも可能であり、加入者が増えれば掛金が安くなるというマーケットメカニズムも働くのです。

 実は、民間保険も商品設計を変える必要に迫られています。例えば、生命保険は残された家族を支えるためのものですが、最近は子どもがいない家庭やそもそも結婚していない人も増えています。医療保険も、高額療養費制度の充実や入院期間の短縮によって加入時に説明されたような医療費が発生することはほとんどありません。現在の民間保険の魅力はどんどん小さくなっているのです。

 他方、将来自分が認知症になったり介護が必要になることへの不安は、子どもや家族の有無にかかわらず、誰もが強く感じています。今後の民間保険では、保険に加入すれば、ただちに生活習慣病や認知症にかかりにくくするサービスが提供されるような商品が増えてくるでしょう。しかも、摂生や我慢によって健康になるのではなく、楽しくワクワクするような内容のプログラムに参加することで結果的に健康を維持できる。そんな商品設計に変わっていくと思います。

 第2は、医療機関や介護施設におけるITシステムの統一です。これまで医療機関で利用されるITシステムの統合や標準化が長年にわたって進められてきましたが、遅々として進みません。これまでの医療では、医者が来院した患者を直接問診したり、検査結果を見ることで診断ができたため、情報の共有や蓄積がなくても大した不都合はありませんでした。

 しかし今後、生活習慣病や老化に伴う疾患が中心になれば、生活習慣の継続的な把握や、経年的な変化のデータが診療には不可欠になりますので、医療システムの統一は医師にとっても重要です。特に、今後多数の高齢者の健康を継続的に管理する「かかりつけ医」にとっては必須のツールとなります。

 さらに、医療データは変換ミスや取り違えがあっては命にかかわりますから、バラバラなシステムで集められたデータを無理に接続して分析するのではなく、入力段階から規格を統一し、入力作業も極力自動化する必要があると考えています。その上で医療関係者間では、個人情報へのアクセスを容易にし、迅速かつ的確な診断が可能になるシステムの構築を目指したいと思います。