医療と経済を連携させよ

武藤 少子化についてはどう考えていますか。昨今は、現役世代の子育ての時間を作るために「働き方改革が必要だ」という意見もあります。

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江崎 私自身の経験を振り返っても、現在の日本は本当に子育てがしにくい国だと感じています。核家族化が進み、夫婦共に働いている場合は1人の子供を育てるだけでも既に手一杯な状況です。保育園への送り迎えはもちろん、子どもが病気になった時など、助けてくれる人がいなければとてもやっていけません。社会全体で子育てをサポートする仕組みを充実させる必要があると思っています。

 他方、働き方改革については、子供の教育費が高騰する中、勤労世代の働き方改革を進めることで給料が下がってしまうと、ますます子どもが産めなくなります。この結果、収入を増やすためにはもっと働かなければなりません。この負のスパイラルを解消するためにも、単なるコスト論ではない環境の整備が必要です。

 また、少子化対策だと言っても子供を産みたいと思っていない人に「産む」ことを求めてはいけません。むしろ産みたくても忙しくて産めない人や2人目が欲しいのにその余裕がない人に安心して産んでいただける環境を作ることが大切だと思っています。かつて家族の中で行われていた支え合いを2周目の人達の協力によって社会全体で実現するのです。

武藤 その発想は確かにありえますよね。そのためには高齢者が元気である必要があります。

江崎 意外に思われるかもしれませんが、高齢者の多くは元気です。内閣府のデータによれば、男性の85%、女性の80%が、80歳近くまで身体的には問題なく活動することができるのです。「高齢者=不健康」というイメージが先行することで、「お年寄りは弱いもの、支えられるべきもの」といった常識がまかり通り、元気な高齢者を社会活動とりわけ経済活動から排除し、医療や介護の対象にしてしまっているのではないかと思っています。

 一般に、医療と経済は二律背反のように語られることがあるのですが、私は医療と経済を連携させることが重要だと考えています。二宮金次郎の言葉に「経済なき道徳は戯言であり、道徳無き経済は犯罪である」というものがあります。医療は「人の命を救う道徳的な行為」だから経済に優先するという人がいますが、現在の医療財政の危機的な状況を見れば明らかなように、片方だけでは上手くいかないのです。