「電磁パルス(EMP)攻撃」――2017年9月3日、核実験を実施した北朝鮮が国営メディアである朝鮮中央放送、労働新聞を通じて“できる”と主張したことで、耳慣れない兵器が一躍注目を集めた。北朝鮮が挙げたのは「高高度電磁パルス」(HEMP)と呼ばれる核兵器の応用例で、核爆弾の爆発(爆風や熱放射)により直接人・物を破壊するものではなく、電磁パルスにより各種電子機器を故障させるものだ。広範囲にわたり、電力・通信インフラ関連や自動車・列車などの輸送機関を含め、すべての電子機器が一瞬にして故障、機能停止に陥れば “もはや文明社会が崩壊する”。そんな脅威論がテレビやネットを賑わした。

防衛研究所主任研究官の一政祐行氏。
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 どんな対応があり得るのだろうか。電子機器やインフラ等の「EMP Hardening」(電磁パルス耐性の強化)の意義は小さくないとするのが、核軍縮に向けて核兵器の研究を行う防衛研究所主任研究官の一政祐行氏だ。「HEMPの目的は電子機器を無力化し、人工衛星や社会インフラなどを壊滅させること。HEMP脅威の本質を慎重に見極めた上で、様々な方法でEMP Hardeningを進め、“中核的なインフラは守れる”と言えるようになれば、ミサイル防衛に加えて、新たにHEMP攻撃をさせない拒否的抑止力(相手国に対して、攻撃を行っても期待した効果は得られないことを悟らせることで、その行動を思い留まらせる抑止力の論理)の1つとなる可能性がある」と話す。

 では、HEMP(高高度電磁パルス)とはどのようにして生まれるものなのか。高度40km~400kmといった高高度において核爆発を起こすことで、γ(ガンマ)線が大気中の分子及び原子と相互作用し、コンプトン効果により強電界が発生、上空と地上の広い範囲に電磁パルスが降り注ぐとされる。爆風や熱線など直接の影響は及ばず人体には無害である一方、電線などの導体にエネルギーが集まり、電子機器を破壊するとみられる。

*気象庁が上げるラジオゾンデ(ゴム気球を使った観測装置)の高度は約30km、一般に「宇宙」と呼ばれるのは高度100km以上、スペースシャトルや国際宇宙ステーションの高度が400km程度、静止衛星の高度が3万6000km。

 電磁パルスは到達時間により3種類に分類されている。最初に到達するのが「E1」で、数n秒~数十n秒の間に電子部品などに過負荷を与え、一時的な断絶もしくは破壊をもたらす。高高度電磁パルスのもたらす被害は主にこのE1によるものとされる。次に数μ秒~数秒の間に到達する「E2」は、波長や持続時間などで落雷に似たような電磁パルスとされる。そのため、雷対策部品で対応できるとの説もあるが、先にE1により不具合などが生じた状態でE2に曝され破壊されてしまうという見方もある。最後の「E3」は秒単位の長い時間継続する大電流をもたらすもので、太陽フレアによる磁気嵐の電磁パルスに近いとされる。

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