GROOVE X代表取締役の林要さんと、慶應義塾大学大学院の前野隆司教授による対談の第2回。今や日本発の文化として世界共通語になった「かわいい」。その要素が満載の「LOVOT」は、デザイナーのこだわりと、それを信じて開発を進めた技術者の共同作業によって生まれた。ビジネスでもプライベートでも、ステークホルダーがこだわりをぶつけ合うことで新しい関係性が生まれる。それをいかに高みに導き、幸せを共有するか。
林さん(左)と前野教授(写真:加藤 康)

かわいさが半減するから、とにかく形は濁らせない

前野 LOVOTは、本当にかわいいですよね。なぜ、こんなにかわいいんですか。

 外形のデザインとしては、球形を繰り返し使っています。パラメトリック設計になっているので、少し形を変えようという場合には変更したパラメーターに合わせて全体の設計が変わるようになっているんです。

前野 デザイナーは社内にいるんですか。

 いいえ。zung designの根津孝太さんと一緒に開発しています。根津さんは、超小型モビリティ「rimOnO(リモノ)」や大型電動バイク「zecOO(ゼクウ)」、サーモスの魔法瓶(ケータイマグ)、タミヤのミニ四駆など、さまざまな工業製品のコンセプト企画やデザインを手掛けてきた有名なデザイナーです。実は、根津さんも僕と同じでトヨタ自動車にいらした方で。

前野 そうなんですか。

 僕が辞めるよりも先にトヨタを卒業された先輩なんです。トヨタの役員に退職のあいさつに行ったとき、根津さんを引き合いに出されたので、「なぜだろう?」と思って根津さんに会い行き、それ以来、一緒に仕事をすることになりました。

前野 波長が合うんですね。

 そのようです。LOVOTについては、最初に大きさ、柔らかくて温かい、こういう機能が必要といった要件を根津さんにお伝えしました。それで出てきたデザインがこれだったんです。

前野 1発目がこれですか。

 そうなんです。最初から球形をベースにすべてが構成されていました。根津さんのこだわった点は、球形を繰り返し使うことと、球形を歪ませないことでした。

 モーターや電池、電子回路の配置を設計していくと、球を楕円にしたくなったり、四角い形状を取り入れたくなったりします。でも、球形のデザインコンセプトを崩してしまうと「かわいさが半減するから、とにかく形は濁らせない」と。

 ただ、そうすると中に入れるものの形状がどんどん大変になっていきます。でも、根津さんは外形だけでなく、内部の構造まで考えるデザイナーなので、設計する際に成立するであろうデザインを当初から考えてあるんですよ。

前野 そこはやはりトヨタ出身だし、工業デザインをよく知っているんでしょうね。