今回の「イノベーションの幸福学」のゲストは、GROOVE X 代表取締役の林要さん。F1や人型ロボット「Pepper」の開発に携わり、現在はペットのような命を感じるロボット「LOVOT(らぼっと)」で注目を集めている。「命はないのに、あったかい」というコンセプトで人に寄り添い、いやしを提供するロボットで、人のパフォーマンスや生活の質を向上させることを目指す。なぜ今、LOVOTなのか。そこには人間の幸せに深く結びつく秘密があった。
林氏(左)と前野教授(写真:加藤 康)

当時は、仕事をするテンションが高かったですね

前野 林さんは、学生時代からロボット開発に携わっていたのですか。

 いいえ、大学時代は数値流体力学(CFD:Computational Fluid Dynamics)を研究していました。ロボットとは全く関係なかったんです。

前野 そうなんですか。大学を卒業して、最初に取り組んだ仕事は?

 トヨタ自動車で「空気の流れ」に関する製品開発を手掛けていました。

前野 流体力学を用いた自動車の空力設計ですね。

 はい。最初の頃はレクサスブランドの「LFA」というスーパーカーを、2003年からF1のレーシングカーを担当しました。

前野 F1の空力設計ですか。面白そうだなぁ。

 ええ。縁があって、ドイツのチームで働いていたのですが、当時は世界トップレベルのエンジニアと働けるということから、仕事をするテンションが高かったですね。

前野 F1の空力設計と言ったら、憧れの仕事です。それなのに、なぜその仕事から離れたのですか?

 F1では自然を相手にした物理的な戦いに、どうしても人的に定められたレギュレーションの要素が加わります。端的に言うと、そのレギュレーションとの戦いに、あまり興味を持てなくなってしまいました。

前野 F1から離れて、次は何を手掛けたのですか。

 2007年にF1の担当を終えた後は、トヨタで製品企画に携わりました。それまでは空力設計の職人で「流体」がエンジニア人生のすべてでしたが、製品企画では原価や質量の計算、工期の線引きなどさまざまな仕事を経験しました。

前野 希望して製品企画に異動したのですか。

 はい。それまでは自分一人で深く突き詰めていく領域を担当していたので、もっと広い範囲を経験したいと考えたんです。その後、2012年にソフトバンクでロボットプロジェクトを担当させてもらうことになりました。

前野 ずっとロボット開発に携わっていたから、Pepperの開発を手掛けることになったのだと思っていました。

 それは違います。「本当に、よく素人にやらせてくれたな」という感じです。

前野 なぜ、ロボット開発の世界に入ろうと思ったのですか。

 自動車やエレクトロニクス、機械などの分野は、かつて右肩上がりの産業でとても元気でした。でも、バブル崩壊以降は次第に元気を失い、多くの人々が「日本の次世代産業って何だろう」ということを模索し続けています。

前野 特に大企業はうまく見つけられないまま、まだ悩んでいる印象ですね。

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