慶應義塾大学大学院の前野隆司教授と、和える 代表取締役の矢島里佳さんによる対談の第3回。10年以上先の会社の姿、そのために実現していく事業が既に見えているという矢島さん。新しい事業のビジネスモデルを構築するプロセスは、パズルのピースを常に集めている感じだと話す。この感覚は、ビートたけしさんと共通点があると前野教授は指摘。2人の対談は、ビジネスと「美」の関係へと進んでいく。
和えるの矢島さん(左)と、前野教授(写真:加藤 康)

「半歩先」が程よい

前野 優れたビジネスモデルは、「大きな理念から目の前のニーズまで、あらゆるものがパチッと一致していて、そして“かつてない”もの」だと思います。でも、多くの人はなかなか思いつくことができません。矢島さん流のビジネスモデルの発想法は?

矢島 パズルのピースを常に集めている感じですね。例えば、和えるでは今、赤ちゃん・子どものときから使える日用品の企画・開発・販売を手掛ける「0から6歳の伝統ブランドaeru事業」と、地域の伝統や歴史を感じられるホテルの一室をプロデュースする「aeru room事業」、日本の伝統コンシェルジュとして職人さんと一緒にオーダーメードで世界に1つだけの商品をあつらえる「aeru oatsurae事業」など4つの事業を展開しています。創業から20年を迎える2031年までに、少なくとも11事業が誕生する予定です。

前野 11事業になるのは、もう見えているんですか?

矢島 はい、明確に見えています。「新しい事業として既に生まれている」「生まれていない」の差は、パズルのピースがそろっているか、そろっていないか、なのです。

前野 11事業が何になるかも、決まっているわけですね。

矢島 分野は決まっています。ただ、事業としてスタートするためのピース、例えば「人」や「お金」「社会の機運」「時代性」といった条件がそろう必要があります。私たちの準備ができていても、社会の準備ができていなければ、事業はうまくいかないと思うのです。そうなったら、和えるが死んでしまう、つまり倒産してしまいます。

和えるが既に展開中の4事業と、仕込中の7事業(画像提供:和える)
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前野 確かにね。新しい事業を始めるために、いいタイミングはあるのですか。

矢島 半歩先が程よいと思っています。あと半歩で社会の準備が整うというときに、私たちの準備が既に終わっていて、新事業が生まれるという状態が理想です。

前野 パズルのピースを集めるコツのようなものはありますか?

矢島 11の事業それぞれの基盤となるビジネスモデルを私が設計し、その基盤を全社員に常に共有します。どんなピースを集めればいいのかをみんなが理解しており、それぞれに集めます。必要なピースが見つかったら私も社員もみんなで「このピース、見つけました!」と報告し合うのですよ。

前野 チームワークがいいんですね。資料を見ると、「伝統×〇〇」というコンセプトで7つの事業が仕込み中になっていますが、個人的には「伝統×研究」が気になります。

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