慶應義塾大学大学院の前野隆司教授とホッピービバレッジの石渡美奈社長による対談の第3回。これまで、経営者として自らのリーダーシップで会社をけん引してきた石渡社長は「今後、社員による集団リーダーシップによって組織をイノベーティブにしていくことがカギになる」と考えている。それを実現するために行き着いた解は、何と「森」。果たして、「森」とは何か。そして、それがイノベーションにつながる理由とは。自らも「森」を経験したという前野教授が迫る。

本当の森に行くんですか?

前野 石渡さんは、大学院(慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科)で「森の研究」を始めましたね。僕は予想外だったんですけど、入学した当初の研究テーマって何だっけ?

石渡 地域創生や経営論でした。まだ入学して間もないころ、前野教授に「森」に連れて行っていただいたんですよ。

前野 いきなり「森」と言っても読者は分からないと思うから、説明しなければならないないですね。森の中に入って静かに自分自身の内面や仲間と対話する「森のリトリート」というプログラムのことです。目的は、自分の仕事について振り返ったり、今後に向けての洞察やひらめきを得たりすること。

前野教授と石渡さん(写真:加藤 康)
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編集I 本当の森に行くんですか?

前野 そう。森も普通の森ではなくて、手付かずの森。倒木がそのままあって、その上にコケが生えていて蜘蛛がいるような、そういう人の手が入っていない森です。

 そこに6人くらいのチームで入ります。集合地点を決めて、そこから別れて自分の好きな場所を見つけたら1人きりで1〜2時間くらい森や自分と対話するんです。その後、集合場所に戻ってチームで対話して、また1人の場所に戻る。日常生活と離れたゆっくりした時間を過ごすプログラムです。

 僕も体験したんですけど、このプログラムには、自分が中心になって引っ張っていく従来型のリーダーシップとは違う「調和型リーダーシップ」の原型のようなものを学ぶ気づきがあると思います。

石渡 私にとっては、かなり衝撃的な体験でした。日本の国土の7割は森なのに入ったことはなかったので、初めての経験でいろいろと感じるところがあって。そして、何となく「次のテーマは『森』だな」って思ったんです。

前野 ほう。