技術で速攻をかける

川口 軽い方が機能的だったとしても、重い方がかっこいいというのが上回ってしまっているんでしょうね。

野々上 仁(ののがみ・じん)
ヴェルト 代表取締役 CEO。1992年に京都大学卒業後、三菱化成(現・三菱化学)に入社。配属された光ディスク部門にて生産管理・新規営業や製品企画を担当。インターネットの世界に魅了され1996年にサン・マイクロシステムズに入社。2010年のオラクルによる買収後は、日本オラクルにて執行役員およびバイスプレジデントとしてハードウエアの事業部門を指揮。2012年8月、次なるネットワークコンピューティングの世界に挑戦するため、ヴェルトを設立。2014年には「アップルウオッチ」に先駆けて日本発のスマートウオッチを発売。現在に至る。(写真:加藤 康)

野々上 眼鏡も時計もそうですが、そういった感性が支配する領域に入っていくのは非常に難しいと感じます。井上さんはそれをJINS MEMEでやろうとしていて、私はスマートウオッチで挑戦していますが、技術だけで何とかなるわけではないので。

川口 でもチャレンジャーというのは、かつて「ユニクロ」のファーストリテイリングが「ヒートテック」で入っていったように、まずは技術で入るしかないんですね。特に日本というのは、フランスなんかと違って、あまりオシャレ感はないですから。ユニクロが成功したみたいに、まず技術で速攻をかけて、「ファストファッションの中ではまあまあオシャレな方だよね」というような感じにして、だんだんハイブランドになっていくステップです。その方が日本のブランドイメージとも合いますから。

 ブランドという意味では、時計も一時期はクオーツ式が席巻しましたが、今は機械式の方が売れているわけですよね。

野々上 それはもう。

川口 台数は少なくても、単価が違いますからね。

野々上 そうです。

川口 やっぱり、死にかけていたはずのスイスなんかのブランドが蘇っていて、うまいこと買わされちゃうわけです。「ロマネ・コンティ」と同じです。欧州というのは、まず米国にやられて、次に日本にやられて、今はアジアにやられて、ものづくりができないですよね。だから、機械式時計やロマネ・コンティ的なブランディングをやるしかない。

野々上 そこは本当にうまいです。

川口 それを失ったら何もなくなりますから。アナログなものを作るしかない。ストーリーをうまく乗せて、価値を高めているわけです。味だけだったら、ロマネ・コンティと比べてもおいしいワインが日本でも作れるかもしれませんが。

野々上 そうではないんですよね。だから、日本だとポリフェノールとか、あくまで機能で言わないと売れない。

川口 ただ、日本もだんだん欧州の方に入り始めているのです。デジタル系なんかは、新興国の方が圧倒的にエネルギッシュですし、社会実験を伴うようなことも新興国の方がやりやすい。

野々上 中国なんかは、まさにそうですね。

川口 とにかく何でもやっちゃえという感じで、実績をどんどん積んでいっています。そうすると、日本はもはやチャレンジャーではなく、守る側になっていて。どっちでいくのか、はっきりさせないといけない。

野々上 私はスマートウオッチに参入するに当たって、どの地域が何に強いのかというのを分析したのですが、日本はまだアナログ的な擦り合わせの技術がたくさんあるんですね。先進国でそういったアナログ的なことをやるのは、決して間違っていない。それから、欧州と比べるとエレクトロニクスが強い。

川口 欧州はエレクトロニクスを失ったんです。

野々上 そうです。ないんです。だから、日本はアナログとデジタルを融合させるIoTで現場力を生かせるはずです。ただ、産業間の連携がまだうまく取れていないですね。文化が違うというか。

川口 センサーとかアクチュエーターとか、リアルとデジタルの界面にあるものですね。