野々上 仁(ののがみ・じん)
ヴェルト 代表取締役 CEO。1992年に京都大学卒業後、三菱化成(現・三菱化学)に入社。配属された光ディスク部門にて生産管理・新規営業や製品企画を担当。インターネットの世界に魅了され1996年にサン・マイクロシステムズに入社。2010年のオラクルによる買収後は、日本オラクルにて執行役員およびバイスプレジデントとしてハードウエアの事業部門を指揮。2012年8月、次なるネットワークコンピューティングの世界に挑戦するため、ヴェルトを設立。2014年には「アップルウオッチ」に先駆けて日本発のスマートウオッチを発売。現在に至る。(写真:加藤 康)

野々上 でも、それをちゃんと認めて、センサーを付けるやり方でいこうとなれば、会社として成長していきますよね。自分のやり方が一番だからと職人さんがずっと教えていたら、大きな差になってしまうわけで。

大坪 それもIoTといいますか、技術の使い方ですね。

野々上 やっぱり何事も計測しないと人間は分からないですよね。体重だって、毎日体重計に乗っていないと、あっという間に1kg、2kgと増えているものです。それと同じで、技術についてもセンサーで計測するのは意味があると思います。

大坪 IoTの良いところは、いろいろなデータを統合的に見られることですね。同じ画面で、いろいろなところで起こっている事象を一覧できます。

野々上 しかもリアルタイムで。

大坪 ものづくりでも何と何が関係しているのかというのは、意外とまだまだ分からない部分がたくさんあります。例えば、加工プロセスが複雑な部品は、物だけ見ても不良の原因などが分からないものです。それが、IoTで加工条件などをプロセスごとに見られるようになれば、原因とか対策を分析しやすくなるかもしれません。

野々上 見方が変わってくるわけですね。

大坪 そうですね。今まで職人がどうやっていたかというと、手で触った感覚とか音とか、経験から導き出してきたと思いますが。

野々上 推測の部分もあったでしょうね。

大坪 そうですね。だから試行錯誤で“おしゃか”もたくさん作ってきたはずです。それが、データで一覧できるのはIoTの良いところです。

野々上 もっと精緻化されていきますね。職人の経験がデータ化され、可視化されていくというか。

大坪 私がARをいいなと思うのは、例えばARグラスを付けてワークを見たら、その加工履歴がパッと見られるとか、寸法の推定値が出てくるとか、そんなことができたらいいですね。

野々上 とても未来的なものづくりですね。

大坪 でも、今の技術を組み合わせればできるんですよね。もちろん、コストなどの問題はありますが、何年かしたらできるだろうなと。

 私がFacebookでものづくりのAR活用みたいな構想を書いたら、早速ゲージメーカーの方が「ARグラスでゲージを見たら、『校正期間が切れています』というようなメッセージを表示できればいいね」とアイデアを出してくれて。

 今、ゲージの校正記録はどの会社もデータで保管しているはずです。だから、ARグラスで見たときにそれをデータベースから拾ってくればいいだけだから、やるかやらないかはコストの問題だけなんです。

野々上 やっぱり大坪さんのように、いろいろなことに興味を持つというのが、IoTを使いこなす上では大事ですね。