2つの回路の間を結ぶ接続(結線)技術。現時点では、プリント基板間の接続であれば機械式コネクターを、IC間の接続であればワイヤーボンディングを利用するのが一般的だ。

 しかし今後、こうした接続技術は一般的でなくなるかもしれない。理由は2つある。1つは、「ムーアの法則」が終焉を迎えつつあることだ。すなわち、微細化の進展が鈍化する。その結果、必要とする全機能を1チップに集積することが難しくなる。複数チップを1パッケージに収めて対応せざるを得なくなる。場合によっては、数十枚ものチップを積層するケースも出てくるだろう。接続部は、膨大な数にのぼる。ワイヤーボンディングでの対応は困難になる。

 もう1つは、今後IoT対応機器の本格的な普及が見込まれていることだ。IoT対応機器では、さまざまな情報を多種多様なセンサーで取得する。機器開発の効率を高めるためには、「システム全体の処理目的に応じて最適なセンサーやボードを選び、『LEGO』ブロックのように組み合わせて実現する仕組みが必要になる」(慶応義塾大学 理工学部 電子工学科 教授の黒田忠広氏)という。既存の機械式コネクターでは、伝送速度や外形寸法などの点で対応が難しいだろう。

 こうした接続技術が抱える課題を解決すべく、慶応大学の黒田氏は、2つの回路の間を非接触で接続する「近接場結合集積技術」を考案した。電磁波の近傍界を利用してデータを無線伝送するものだ。

 近傍界とは、波源の近傍だけに存在する電磁波成分で、その強度は波源から遠くなればなるほど急速に減衰する。このためデータ伝送可能な距離は、波長の約1/6以下(3GHzであれば約1.6cm以下)と極めて短いが、電極が密集して存在していてもクロストークが発生することなく、データを無線伝送できるというメリットがある。しかもデータ伝送速度は高い。電極の形状などに依存するが、10Gビット/秒を超える値が得られる。消費電力も6pJ/ビットと極めて小さい。

 同氏はこの基本原理をベースに2つの伝送技術を開発済みだ。1つは、「TLC(Transmission Line Coupler)」で、基板間を接続するコネクターの置き換えに向ける。もう1つは、「TCI(Thru Chip Interface)」。半導体チップの間をつなぐワイヤーボンディングやシリコン(Si)貫通電極(TSV:Through Silicon Via)などの置き換えに向けたものだ。以下で、2つの技術の開発状況を説明しよう。