千葉工業大学 教授で、パワーデバイス・イネーブリング協会(PDEA)理事の山本秀和氏

 パワーデバイスの注目度が高まっている。今後、パワーデバイス市場は安定的な成長が見込めるとされており、日本をはじめ、世界の半導体メーカーの多くが注力分野の1つに挙げている。期待される市場成長にはパワーデバイスの低コスト化とともに、性能向上も欠かせず、半導体メーカーの力量が試される。

 本コラムでは前回、千葉工業大学 教授でパワーデバイスの研究に従事している山本秀和氏へのインタビューの前編として、現在主流であるシリコンパワーデバイス分野の現状、そして低コスト化に向けた問題点などを聞いた(前編へのリンク)。後編の今回は、SiCやGaNなどの次世代パワーデバイスの今後の方向性や、同氏が理事を務めるパワーデバイス・イネーブリング協会(PDEA)での活動内容について聞いた(本コラムの詳細はこちら、PDEAについてはこちら、半導体テスト技術者検定の教科書についてはこちら)、検定の問題集についてはこちら)。

――SiCやGaNのポテンシャルは。

山本氏 SiCパワーデバイスは、パワーコンディショナーや電気鉄道システム(電鉄)用途など特殊市場での市場投入が開始されている。周知の通り、性能はシリコンデバイスを凌駕するが、コストが高い。SiCデバイスは特性が良いことは実証済みで、デバイスメーカーも製造の準備はできている。最大の課題は、やはりウエハーに使う結晶の製造技術だ。

 本格量産のためには、6インチ口径(150mm口径)で500mmから1mの長尺結晶を製造する必要がある。現在、ウエハーに使うSiC結晶の成長には昇華法を用いるのが主流だが、昇華法でSiC結晶を製造しているうちは本格量産にはなり得ない。ガス成長法などに期待したいが、課題も多く、低コストな結晶成長法の確立が業界全体で望まれているところだ。

――GaNについてはどうか。

山本氏 GaNパワーデバイスは低容量・低耐圧領域では有望なデバイスだ。しかし、GaNもSiCと同様に結局のところ、コストをいかに安くしていくかがカギだ。GaNパワーデバイスは現状、シリコンウエハー上にGaNのエピタキシャル成長を行ったGaN on Siが主流であるが、GaNが本来持つ性能をフルに引き出すには、下地基板にもGaNを用いたGaN on GaNが理想だ。しかし、実用化には結晶育成技術の確立が必須で、これはSiC以上にハードルの高いものだと思っている。

 また、SiCについてもいえることだが、今後の実用化に向けては、結晶や前工程プロセスだけでなく、モジュールやパッケージ技術にも目を向けていく必要がある。SiCの優位性の1つとして高温動作があり、これに対応したワイヤーや裏面接合技術、封止技術などの開発を業界全体で取り組んでいく必要がある。

――他の材料の検討も進んでいる。

山本氏 ダイヤモンドや酸化ガリウムが候補として名前が挙がるようになってきた。ダイヤモンドはパワーデバイスにすぐに使われるということはないと思うが、他の半導体にはない負の電子親和力を生かした電子放出型デバイスを実現できる。酸化ガリウムはシリコンと同じCZ法(チョクラルスキー法)で製造できるので安く作れることがメリットだが、p型をまだ作れないというのが弱点の1つだ。

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