ガンプラ(ガンラムのプラモデル)が誕生してから2015年で35周年を迎える。ガンプラの元となったアニメ「機動戦士ガンダム」シリーズに登場するロボット(モビルスーツ:MS)を数多くデザインしたのが、メカニックデザイナーの大河原邦男氏である。活躍の場は、ガンダムや「タイムボカン」シリーズ、「装甲騎兵ボトムズ」シリーズなどのアニメだけにとどまらない。実際、2015年8月8日から上野の森美術館で開催されている展覧会「メカニックデザイナー 大河原邦男展」には、「グリコのおもちゃ」や電気自動車など、大河原氏が携わったアニメ関係以外の作品が豊富に展示してある。デザイナーという立場ながら、レーザーカッターや3Dプリンターといった工具を揃えた「工房」を自宅に作るほど、ものづくりが好きという顔も持つ。そんな大河原氏に、メカニックデザインという仕事に対する取り組み方や、ガンダムやザクといったMS誕生の経緯、ものづくりへの思いなどを語ってもらった。前後編2回に分けてお届けする。前編では、メカニックデザインを行う上で大切にしていることや仕事への姿勢を語ってもらう。(構成=根津 禎)

 メカニックデザイナーとして、見た人の脳裏に何かを残すことに重きを置いています。言い換えると、心に“種”を蒔くことです。私が主に仕事をしているアニメーションの世界は、仮想的な世界です。描いたメカを実現できるのか、内部はどうなっているのか、などまで考える必要はありません。ただ、見た人に「作ってみたい」と思わせればいい。心に火をともすのが、メカニックデザイナーの仕事だと自負しています。

インタビューに応じる大河原邦男氏(写真:加藤 康、以下同)
インタビューに応じる大河原邦男氏(写真:加藤 康、以下同)
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 後は実現したいと思う技術者が何とかして、作ってくれる。そう思っています。私のメカデザインで子供たちの心に蒔いた“種”は、今まさに芽吹き始めていると感じています。例えば、サイン会を開くと、40歳代の方が多く来てくれます。彼らはガンダムやボトムズなどを子供のときに見ていた世代です。その子供たちが今、40歳代になるのは当たり前なのですが、これほどまで長くアニメに影響を受けているとは思いませんでした。

 その中には多くの技術者がいます。先日、ある自動車メーカーの技術者が開発したパーソナルモビリティーを見せてもらいました。そのとき、開発者の方が、「これが私のボトムズです」と紹介してくれた。今、こうした人が各メーカーに入って、それぞれいろいろなものを作っています。子供の頃にガンダムを見た世代は大人になったとはいえ、上司がいるのでロボットアニメに影響を受けた製品を自由に出すのは難しいでしょう。しかし、将来はそういった上司はいなくなり、日本のロボットアニメで育った世代は、アニメに登場したロボットを意識したものを作ってしまうと思います。

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