プラーナー シニアコンサルタント 木下悟志 氏
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 前回は、1個しか造らない一品物における公差設計の必要性とばらつきの考え方について説明しました。今回は、ばらつきを予測するために必要な工程能力について取り上げたいと思います。前半では、工程能力の定義ついて簡単に復習し、後半では工程能力を維持管理する方法について解説します。

公差をばらつきで割った値

 工程能力は、これを数値化した工程能力指数「Cp(Process Capability index)」という尺度で評価します。Cpは、大まかに言うと、設計で定義する公差を、製造の結果であるばらつきで割った値です。意味としては相対的に、公差を厳しくする(ばらつきを大きくする)とCpが小さくなり、公差を緩くする(ばらつきを小さくする)とCpは大きくなります。

 具体的には、Cpは以下の式で定義されます。

Cp=(U-L)/6σ

 ここで分子の、U(Upper Specification Limit)は許容限界の上限値、L(Lower Specification Limit)は許容限界の下限値です。許容限界の上限値と下限値で挟まれた範囲が公差ですから、上辺は公差を示します。

 一方、分母の6σは標準偏差σの6倍を意味します。部品を大量に作った場合、寸法などのばらつきは一般的には正規分布となりますので、標準偏差σを計算することができます。ばらつきの平均からσの3倍(3σ)離れた位置を上限、逆側に3σ離れた位置を下限とすれば、その範囲は6σになります。これが下辺の意味です。

 6σ(平均値の±3σ)の意味をもう少し説明すると、正規分布の確率密度関数において±3σの間に入る確率は99.7%となります。つまりCpが1(公差と6σが同値)の場合、製造した部品の寸法などの実測データが公差内に入る(良品である)確率は99.73%、逆に言えば不良率は0.27%です。Cpの違いによる正規分布との公差(UとL)の関係を図1に示しました。Cpが小さくなれば不良率は大きくなっていきます。

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図1 工程能力指数(Cp)と不良率の関係

 Cpの目標値は業種によって異なり、例えば自動車業界では1.33としているケースが多いようです。また、Cpは部品単体の特定の寸法だけでなく、複数の部品で構成される製品、つまり公差が積み重なった場合にも計算できます。部品の公差を積み重ねて(合成して)製品でのCpを計算する方法についてここでは詳しく述べませんが、公差設計を実務展開する上ではその知識とスキルが重要となってきます。

 さて、正規分布は大量に造った場合の結果であって、一品物や少量生産品の場合には標準偏差など計算できないのではないか、という疑問を持つ方もいるでしょう。しかし、一品物でもばらつきは存在することを前回で説明しましたが、正規分布についても同様です。ある特定の工法で造る以上、その結果がどうなるのかは、ある一定の確率でばらつきます。つまり、公差を設定すればCpを計算し、不良率を予測できるのです。一品物の場合でもCpを活用し、装置の性能達成度を高めたり、調整時間や再加工の手間を省いたりすることができるので。

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