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渡辺史敏の「米スポーツ産業ヘッドライン」

全電力を太陽光で賄うアリーナ、米スポーツ界でSDGs活発化

2018/11/22 05:00

渡辺 史敏=ジャーナリスト

 国際連合が掲げ、今やトレンドワードとなっている「SDGs(持続可能な開発目標)」。米国のスポーツ界でもSDGsへの取り組みが活発化している。ただし、米国では2015年の策定以前の2010年頃から取り組みが本格化したため、SDGsではなく「sustainability(持続可能性)」という言葉が使われることが多い。

 例えば、プロアメリカンフットボールNFLのフィラデルフィア・イーグルスは約6万9000人収容の本拠地リンカーンフィナンシャル・フィールドに2010年から段階的に1万1000枚の太陽光パネルとスタンド最上部に14基の風力発電機を設置し、スタジアムの消費電力全体の約30%をカバーしている。残りの電力も、バイオディーゼル燃料と天然ガスを使用する発電機でまかなっているとのことだ。バイオディーゼル燃料生成には有機ゴミや使用済み食用油などを使用している。

49ersのリーバイス・スタジアム、食品ロス対策も

 同じNFLのサンフランシスコ・49ersも持続可能性への取り組みに熱心なことで知られている。本拠地「リーバイス・スタジアム」はIT(情報技術)設備が充実した「スマートスタジアム」として有名だが、米国グリーン・ビルディング協議会(USGBC)による建築や都市の環境性能を評価する格付けシステム「LEED」において2014年の完成時に新設で、2016年に運用とメンテナンスで2回のゴールド認定を受けた。

リーバイス・スタジアムが、米国グリーン・ビルディング協議会(USGBC)による建築や都市の環境性能を評価する格付けシステム「LEED」においてゴールド認定を受けたことを発表したプレスリリース
(図:リーバイス・スタジアム)
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 歩行者通路やスタンドの上部に約1858平方メートルの太陽光パネルが設置され、使用電力の37%をまかなっている。またスイートボックスの入るビルの屋上は緑化されており、レタスなどの野菜も栽培されている。メンテナンスでは清掃用品や使い捨て紙製品、ゴミ袋などの購入に持続可能性プログラムが導入され、85.93%が持続可能な基準を満たしているという。

 さらに49ersの取り組みはスタジアムだけでなく、食品ロス対策にも広がっている。余った食料品を寄付してもらい、貧困層へ配送する活動を行う米Copiaと2017年から提携したのだ。昨年は選手が食事をとるチーム・カフェテリアの余剰食品を寄付した。

 これについてCopiaのコマル・アーマドCEOは「その多くがタンパク質で、これはヘルシーで栄養豊富な食品を食糧不足の顧客に提供することを目指している我々にとって特に価値があります」と絶賛。今年は提携を拡大し、1年中運営されているスタジアム内のレストランから出る余剰食品の提供も開始した。さらに49ersのホームゲーム当日の余剰食品の提供も始まっている。

Copiaはインスタグラムに、49ersとの食品ロス対策を投稿
(図:Copia)
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 49ersが本拠を置くカリフォルニア州サンタクララ市はシリコンバレーの中心地であり、有名IT企業が集まる一方で、メキシコからの移民など低所得者層が多い地域でもある。それ故、49ersやこれらの企業から食品提供を受けるCopiaの活動は効果的と評価されている。49ersとしても地域貢献できるだけなく、食品ロス対策活動を報告することによって税制上の経費削減を行うこともできている。