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渡辺史敏の「米スポーツ産業ヘッドライン」

ツイッターからカメラ制御も、「異次元観戦体験」への挑戦

2018/09/28 05:00

渡辺 史敏=ジャーナリスト

 米国のスポーツ界で、新たな映像サービスを開発する試みが複数行われている。

 まず、2018年3月から4月に開催されたNCAA(全米体育協会)1部の全米バスケットボール選手権では、67試合中21試合でメディア企業のターナー・スポーツによるVR(仮想現実)での試合中継が実施された。昨年は9試合だったから3倍近く増えたことになる。

 ターナー・スポーツのマーク・ジョンソン上級副社長によれば、今回課題となったのはカメラの設置場所だという。「できる限りコートに近い場所にカメラを設置したかったのです。できるならファンがコートにいるように感じさせたい。でも、それはチャレンジです。実際の試合を混乱させることはできないのですから。時には邪魔になったり選手が怪我をする可能性があるとリーグが神経質になったりしました。場所についてテストした結果、カメラをバスケット後方とサイドラインに設置することが現時点ではベストだと思います」と語っている。

NCAA(全米体育協会)が2018年3月から4月に開催した全米バスケットボール選手権で、VRでの試合中継を実施することを発表したプレスリリース
(図:NCAA)
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 さらに「ファイナルフォー」と呼ばれる準決勝と決勝戦では、出場校の学生が陣取るエリアにもカメラが設置された。こうすることで学生達がチームの活躍に興奮する様子の中にいるような没入感が得られる。VRならではの試みだといえよう。

 昨年のVR配信ではテレビの実況や解説音声が流されなかった。これはVR映像の場合、視聴者がテレビの画角とは違った方向を見ている可能性があり、見ている画像と音声がマッチしないこともあるためだ。今回ターナー・スポーツはVR専用のアナウンサーを置き、実況させた。VR配信がファンに受け入れられるためには、まだまだ試行錯誤が必要なのだ。

NBAはサマーリーグでAR

 一方、同じくファンに没入感を体験してもらおうと新たにAR(拡張現実)アプリの提供を始めたのが、北米プロバスケットボールのNBAだ。若手選手の育成を目的としたサマーリーグが導入した「NBA AR」がそれである。スマートフォン(スマホ)で同アプリを起動し、カメラで風景を撮影すると画面上ではまるで“ドラえもんのどこでもドア”のような架空のドアが表示される。そのドアをくぐるとそこにはNBAの試合映像が流れており、あたかもコートサイドにいるかのような映像体験が得られる。体験後、さらにドアが現れ、くぐると現実世界に戻れるようになっている。