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渡辺史敏の「米スポーツ産業ヘッドライン」

大学発の“柔らかいヘルメット” 脳振とう問題に光明か

2017/08/21 05:00

渡辺 史敏=ジャーナリスト

NFLのテストでトップ評価

 ZERO1の特徴は、手で押すとたわむほど柔らかな素材でできたアウターと、自在に伸縮する独立した円柱が集まった「RFLX」と呼ばれる中間レイヤー、内部のシェル、さらに頭部にフィットするパッドという4層構造でできていることだ。特に柔らかなアウターとRFLXは、これまでにないものである。

 発売直後のZERO1が、高い関心を集めるきっかけとなったのは、NFLとNFL選手会が共同運営する研究所が行った、ヘルメットの衝撃吸収力テストの結果である。他社を含め33のヘルメットについて、さまざまな観点から衝撃吸収力を試験したのだが、ZERO1が最も優れていると評価されたのだ。

 アメフト界において脳振とう問題は深刻なだけに、この結果は大きなアピールになった。すぐに20の大学、さらにNFLでも全32チーム中25のチームからオーダーが入ったという。NFLの選手個人でも、フィラデルフィア・イーグルスのQB(クオーターバック)のカーソン・ウェンツやカンザスシティ・チーフスのQBアレックス・スミスなど、著名な選手が今シーズンの使用を表明している。

4000万ドルの資金を調達

 こうした展開に、スタートアップ企業のVICIS社の将来性に対する評価が急上昇した。2017年に入り、1000万ドル以上の追加出資を受けており、同社が集めた総資金は4000万ドル近くとなった。

 追加出資者の中には、シアトルを拠点とするNFLチーム、シーホークスの選手、ダグ・ボールドウィンも含まれる。ボールドウィンは地元ラジオ局の番組で、「オフシーズンの練習プログラムで着用した。今シーズンを通じて使用するつもりだ」とZERO1を自らテストした上で、継続使用する意志を表明した。

 さらに投資に関しては「我々の分野で何かドラスティックな変革を行おうとしている会社と親しくなるだけでなく、より安全な道具を自分自身が手に入れるための良い機会だと判断した。より安全になるためのテクノロジーとして信頼している」と話したという。

7月には米オークリー社と提携し、ZERO1の前面に取り付けて目を守る「EDGEシールド」を発表(写真:VICIS社)
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 アメフト用ヘルメットの製造・販売は、脳振とう問題もあって安全性に対して訴訟リスクを抱える分野でもある。実際NFLを相手取った集団訴訟では、NFLの公認メーカー、米リデル社が訴訟の対象になったこともあった。にもかかわらず、この分野が有望なビジネスチャンスと捉えられているのは、やはり米国らしいと言えるだろう。

 そうしたことを同社も十分認識しているようだ。7月にはサングラスで有名な米オークリー社と提携し、ZERO1の前面に取り付けて目を守る専用のアイシールド「EDGEシールド」を発表した。

 オークリー社が持つ「プリズム・レンズ・テクノロジー」によって、これまでにない良好な視界が得られるということだ。ZERO1の課題の一つは、価格が1500ドルと既存品の4~5倍も高価なことだが、ブランド力のあるオークリー社と提携し、安全性により優れる“高級ブランド”の地位を固めようとしている。