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渡辺史敏の「米スポーツ産業ヘッドライン」

23億ドル NFLパンサーズ、北米スポーツ史上最高の買収劇

2018/06/28 05:00

渡辺 史敏=ジャーナリスト

リーグの買収規制が最大の要因

カロライナ・パンサーズのヘルメット(図:NFL)
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 にもかかわらず、史上最高額とはいえ、なぜ今回の買収額は資産価値よりも低くなったのか。そこには、いくつかの要因があるようだ。まずNFL独自の要因は、リーグがテレビ放映権を一括管理していることにある。放映権収入の約80%がチームに公平に分配される仕組みだ。これはNFLがリーグ全体として成功してきた大きな要因でもある。

 しかし、米プロ野球MLBやNBAでは近年各チームが地元ケーブルチャンネルと莫大な金額で契約し、その資産価値を上げる例が増えている。NFLではそうした契約が結べないため、いわばチーム独自のビジネス展開に制限がかかっている格好だ。

 またパンサーズはノースとサウスの2つのカロライナ州を代表するチームを標榜しているが、実質的な本拠地はノースカロライナ州シャーロットである。同市の人口は73万人余りで、飛び抜けた大都市のチームではない。この点もビジネスにとってはマイナス要素となる。

 さらに今回最大の要因と見られているのが、リーグにおけるチーム買収に関しての規制である。NFLやNBA、MLBなどはいずれもチームを買収しようとする人々や投資家グループに厳しい条件を設けている。NFLの場合、筆頭オーナーはチームの全株式の30%以上を保持することに加え、その購入に際して借り入れ額の上限を3億ドルと定めている。少数オーナーの人数も制限があり、日本のプロ野球のように企業がオーナーになることもできない。

アップル株を大量売却

 つまり20億ドルでチームを買収しようとしたら、3億ドルのキャッシュを保有していなければならない。そのうえ残りの額を負担してくれる少数オーナーを何人か見つけ、投資家グループを競争の中で結成する必要もある。

 米国は大富豪が多いとはいえ、さすがにこの額となると短期間で用意できる人物はなかなかいない。テッパー氏は真の用途は不明なものの、今年第1四半期に米アップルの株式を約460万株売却したことが判明している。約8億5300万ドル相当の金額だ。一方、今回テッパー氏と競ったとされるマイケル・ルービン氏はファナティクスとの提携で資金を調達できたものの、ベン・ナバーロ氏はキャッシュを用意できなかったと報道された。

 こうしたリーグによるチーム買収時の条件はチームの売買を難しくしており、NBAロケッツの時も難航した上、資産価値と同じ22億ドルで落ち着いた経緯がある。それぞれのリーグ、チームが成長し、資産価値が上がった故の苦しみともいえるだろう。このため、各リーグが条件の緩和に動くのではと噂されるようになっている。「史上最高額を更新」と簡単には喜べない状況に突入しているといえるだろう。