VR/ARやドローン…テクノロジーが生む新スポーツ

2018/05/16 05:00

渡辺 史敏=ジャーナリスト

 統一団体の設立や高額賞金大会開催の可否を巡る議論など、日本でも話題になることが増えてきたeスポーツ。その一方でまだ定義が固まっていないものの、テクノロジーを使った新たなスポーツ分野が生まれつつある。「Vスポーツ」だ。

 Vスポーツの定義は現在、大きく2つある。1つはVR(仮想現実)を使ったスポーツだ。VRについても専門施設や「PlayStation VR(PSVR)」(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)、簡易ゴーグルの販売など、身近なものとなりつつある。

 そんなVRは野球の投球やアメリカンフットボールの選手の動きを全球映像で体験することがトレーニングに取り入れられるなど、実はスポーツとの親和性が高い。カーリングやアーチェリーなどを疑似体験できるアトラクションも登場している。またエンターテイメント施設では、チーム制のシューティング対決やアニメ「ドラゴンボール」に登場するかめはめ波の撃ち合いといった対決型のアトラクションが人気だ。

 こうしたこともあってVR映像による仮想空間の中で、身体を使う物理的なスポーツ向けソフトを開発する動きが出ている。例えば米10ANTHILLが販売する「Racket Fury: Table Tennis VR」はVRを活用した卓球ゲームソフトだ。現在、米HTCのVR用ヘッドマウントディスプレー(HMD)「VIVE」と韓国サムスン電子のHMD「Gear VR」に対応しており、プレーヤーはロボットになって様々なVR空間で卓球を楽しめる。ゲームのキャラクターを相手にするだけでなく、オンライン対戦も可能だ。

米10ANTHILLが販売するVR卓球ゲーム「Racket Fury: Table Tennis VR」
(図:10ANTHILL)
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 一方、米CCPはPSVRや米オキュラスのHMD「Rift」向けにドッジボールを基にしたVRゲームソフト「Sparc」を開発・販売している。「SparcはVスポーツだ」と謳うこのゲームは、VR空間内で、対戦相手と映像のボールを投げ合い、相手にぶつけたり、ブロックしたりして競うものだ。

米CCPが開発した、ドッジボールを基にしたVRゲームソフト「Sparc」
(図:CCP)
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 身体の各所に着けるセンサーなども増えており、今後このようなVRスポーツソフトや競技は増えそうである。伝説的ゲームメーカーのATARIを創業したノーラン・ブッシュネル氏が創設した米Modal VRは、300m四方という広大なフィールドを10名のプレーヤーが走り回ることができるVRシステムを開発しており、この分野で期待されている。

ドローンの3次元レース

 VRではなくAR(拡張現実)ではあるが、日本の超人スポーツ協会が展開する、HMDとアームセンサーを着けて仮想のエナジーボールとバリアを駆使して競う「HADO」も、このカテゴリーに入るといえるだろう。

 もう1つのVスポーツの定義は、ビデオ技術を基礎とする新たなスポーツだ。そこにはVRやARも含まれ、より定義が広いと言えるだろう。

 このVスポーツにおける代表競技の一つが、ドローンを使ったレースだ。世界的大会やシリーズが開催されている他、日本でも開催されるようになっている。

米DRLが運用するドローン・レースのシリーズ「THE DRONE RACING LEAGUE」
(図:DRL)
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 ドローン・レースの技術的特徴の一つが、パイロットと呼ばれる操縦者が、VRヘッドセットのような画像ゴーグルを着けて操縦する点だ。ドローンにはカメラが搭載されており、パイロットはそこから送信されるリアルタイムの“一人称視点”画像を見ている。通信技術の進化で高精細で遅延のない画像を送受信できるようになったため、急旋回と急上昇・急降下をするような高速の3次元レースが実現できたのだ。

 ドローンを使用するVスポーツはレースだけではない。ドローン用のカスタムパーツを販売する米Flynocerosは、ドローンが3次元の空中フィールドでボールを操る新競技を開発中だ。同社はこの新競技を小説ハリー・ポッターに登場する魔法使いの球技から「リアルライフ・クィディッチ」と呼んでおり、実現が待たれている。

ファンが試合をコントロール

 さらに、これまでとは全く異なる形で参加するスポーツも生まれそうだ。2019年の開始を目指し、準備が続く新たなプロ・アメリカンフットボールリーグ「ファン・コントロール・フットボール・リーグ(FCFL)」がそれだ。FCFLは基本的に7人制の屋内アメリカンフットボールのリーグである。ゲーム動画で人気のTwitchと契約しており、Twitchがライブストリーミングを行う予定だ。

ファンが試合をコントロールするプロ・アメリカンフットボールリーグ「ファン・コントロール・フットボール・リーグ(FCFL)」
(図:FCFL)
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 FCFLではリーグ名の通り、ファンが試合をコントロールする。Twitchの機能拡張として、専用アプリが配信され、ダウンロードしたファンの端末には試合中、自分が応援するチームのプレーがアメリカンフットボールのゲームのように表示される。これと思ったプレーに投票すると、その結果によってフィールド上の選手が実際にそのプレーを実行するのだ。

 ファンにプレーを決めてもらう試みは過去に野球などで行われたことがあるが、いずれも単発のイベントなどに留まった。今回はリーグ全体での大がかりなものとなる。ライブストリーミングとアプリの発達があってのものだ。

 しかもFCFLはプレーだけでなく、チーム名やマスコット、ロゴなどもファンが決めるとしている。コンセプトは分かるが、斬新過ぎる気もしないわけではない。8チームで構成される予定のFCFLが、果たして予定通りスタートできるか気になるところだ。

 まだ黎明期といえるVスポーツだが、今後急成長する可能性もありそうだ。