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渡辺史敏の「米スポーツ産業ヘッドライン」

米プロ野球の下部リーグがビジネス拡大にまい進するワケ

2019/03/29 05:00

渡辺 史敏=ジャーナリスト

ヒスパニック層に1800万人のMiLBファン

 MiLBによれば、米国のヒスパニック層には1800万人のMiLBファンが存在しており、この数はプロバスケットボールNBAやプロサッカーMLSに次ぐ規模だという。そうした潜在層を掘り起こすことが大きな目的である。

 企業では、電動工具のエコーがキャンペーンの公式電動工具スポンサーになった他、アメリカ・ループス財団はキャンペーンの公式慈善団体として契約した。これはMiLBにとってラテン系ファンを対象にした初めての慈善パートナーである。

 この他スポーツ用品メーカーのナイキやグッズ販売のファナティクスなども積極的にキャンペーンに参加している。

 一方、大型スクリーンを始めとして、MLBに比べて貧弱な設備が多いMiLBのスタジアムの向上についてもリーグは積極的な姿勢を見せている。2019年2月26日、オーディオビジュアル製品の大手メーカー、Peerless-AVと公式デジタルディスプレイパートナー契約を結んだ。

 同社はMiLBにおけるスクリーン技術の独占的プロバイダーとなるだけでなく、2018年にMiLBが提携したアレジアント航空、ネットワーク企業ISM Connectと共に「スポーツとエンゲージメントにおいて最大のデジタルに接続されたスマートスクリーン・ネットワークを築いていく」としている。

スタジアムでの体験を向上

 今年はいくつかのチームがPeerless-AVの技術を使用したデジタルネットワークに参加する機会を与えられた。2020年の開幕までに50以上のチームが導入する予定だという。具体的にはコンコースにLCDディスプレイが設置されるほか、大型ビデオボード、リボンボードなどが導入される見込みだ。

Peerless-AVがMiLBのオフィシャル・ディスプレイ・パートナーとして契約を結んだことを発表したMiLBのプレスリリース
(図:MiLB)
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 さらにISM Connectは「ISMのコンテンツ管理システムを活用することで、ターゲットを絞ったマーケティングコンテンツやカスタムブランドのコンテンツの作成・管理が可能になり、チームはファンエンゲージメントの向上、収益の増加、ブランドの転換を促進することができます」としている。

 MiLBのチーフマーケティング兼コマーシャルオフィサーのデイビッド・ライト氏も「MiLBは革新を促進し、ファンのためにスタジアムでの体験を向上させることに尽力している。今回の提携で、MiLBとそのチームのファンエンゲージメント、パートナーシップの機会をさらに高めることができるだろう」とコメントした。

 最新技術をリーグ主導で導入することで、テレビ放映権収入が低いMiLBの貴重な収入源である観客数の増加が期待される。

背景にスポーツ賭博の合法化

 MiLBはなぜ今、ビジネス化や収益拡大に熱心になっているのだろうか。その背景の一つにあるのは昨年合法化されたスポーツ賭博によって負の影響、つまり選手が八百長に巻き込まれる可能性が高まっているという認識があるからだ。

 MLBとMiLBの格差は非常に大きい。今年MLBの最低年俸は55万5000ドルで、昨年の平均年俸は409万ドルだった。一方、MiLBではメジャーを経験した選手は9万400ドルか4万5300万ドルを受け取ることができる。しかし7500人の選手のほとんどはキャンプ中は無給で1日25ドルのフードクーポンが支給されるだけ。シーズンが始まってもシングルAだと月1100ドル、トリプルAでも数千ドルしか給与が出ない。

 薄給が故に、MiLBの選手は八百長の誘いに弱いと考えるのも当然だろう。MiLBのパット・オコナー社長はボストンヘラルド紙のインタビューで「予防策がなければ、それは『もし』というレベルではなく、『いつ』というべき問題だ」と懸念を示している。MiLBがビジネスを拡大させ、選手の給与を引き上げることはリーグにとって喫緊の課題でもあるのだ。