1. はじめに

 「第5回 関西高機能素材Week 2017」がインテックス大阪で9月20日から22日まで開催された。本コラムでは、関西高機能素材Week 2017で筆者が注目した技術などを紹介する。今回は、旭硝子の研究所が展示した「開発途中の品」を紹介する。同社が研究所の開発品を主体に出展するのは、今回が初めてとのこと。ここでは「C12A7エレクトライド」と「U-TAOS」を中心に紹介する。

2. C12A7エレクトライドと有機EL

 C12A7は、アルミナセメントの構成成分の1つである(図1)。内径0.4nm程度の籠状の骨格が面を共有してつながった構造をしており、この籠には酸素イオンが含まれている。東京工業大学教授の細野秀雄氏の研究グループは、この籠の中の酸素イオンをすべて電子で交換して、金属のように電気をよく流し、電子を外部に極めて与えやすい性質を持ちながら化学的にも熱的にも安定で容易に取り扱うことができる「C12A7エレクトライド」を開発した。

図1 C12A7(12CaO・7Al2O3)結晶(東工大の資料)
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 また、アモルファス(非晶質)のC12A7エレクトライドを作製できることを示し、特徴的な性質を持つことを見いだした。

 現在、有機ELディスプレーの電子注入材料には、フッ化リチウム(LiF)や、アルカリ金属をドーピングされた有機材料が用いられている。しかし、これらは不安定な物質であったり、または不安定な状態で使われている。そこで細野氏の研究グループと旭硝子の研究グループは、より安定したアモルファスC12A7エレクトライド薄膜を開発した。

 このアモルファスC12A7エレクトライド薄膜は、旭硝子の研究グループが開発したターゲット材を用いて、室温のスパッタリング工程から得ることができる。可視光域で透明であり、容易に電子を放出し、しかも化学的に安定しているというユニークな特徴を持つ。これに細野氏の研究グループが開発した透明アモルファス酸化半導体(TAOS)を用いたn-チャネルのTFT素子を組み合わせることで、デバイス構造として有利な逆構造型でも、駆動電圧の低い電子輸送層を安定して高い歩留まりで製造できるようになる(図2)。

図2 従来品との比較(東工大の資料)
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 TAOS TFTは大型有機ELパネルの駆動に適しているが、その性能を生かす逆構造の実現に必要な電子注入層と電子輸送層として、うまく機能する物質がなかった。今回の開発成果によって、酸化物TFTで駆動する有機ELパネルの性能の大幅な改善が期待できる。

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