記事一覧

AIと創るスポーツ新時代

フェンシング銀メダリストの妙技、試合解析で見えた

直感的な気づきと判断がレジェンドを形づくる

2017/04/07 05:00

國井 佳奈子=LIGHTz Weaver(ウィーバー)

レジェンドの直感的思考と判断

 では、ORINASに学習させる“感性”とは具体的に何を示すのでしょうか。感性という言葉のイメージは、人によって異なると思います。LIGHTzでは専門家の知見を体系化する上で重要な感性を、「彼らが絶対に外せない大一番で技を決めてくる、直感的な気づきと判断」と定義しています。これはスポーツに限らず、どんな分野でも共通で、要所で的確な判断を下し、成果を積み上げてきた人がその道のレジェンドと呼ばれる存在ということでしょう。重要な場面で、何が解決のポイントだと気づき、判断し動いたのか。この個人によって異なる直感的な思考や判断を感性と表現しています。

 選手の感性がスポーツにおいて重要な役割を果たす。このことに私たちが気づき、スポーツビジネスにAIで参入するきっかけとなったのが、フェンシングの太田雄貴選手との出会いです。私たちは2015年12月から、日本スポーツアナリスト協会の要請の下、リオデジャネイロ五輪を前にした太田選手の試合を分析しました。目的は、太田選手の得意なプレー、不得意なプレーのパターンをそれぞれ明らかにすることです。太田選手といえば、世界選手権での優勝経験もあり、北京五輪では個人で、ロンドン五輪では団体で銀メダルを獲得した世界トップレベルのアスリートです。

 太田選手が試合中に感じていることと、実際のプレーの間にはどのような関係があるか。これを明らかにするため、まずはAIを使わずに、客観的に得られるデータに基づいた分析を進めました。ただ、フェンシングの公式戦では体にセンサーをつけることは禁止されています。従来は試合動画を用いて、打突(剣を交し合い、得点が決する場面)などの特徴的なプレーを対象に、攻撃した相手の体の部位や成功率などを分析していたそうです。そこで、これまで分析の及ばなかった交戦開始の合図から得点が決するまでの試合全体の流れを可視化することに挑戦しました。