本連載は、2016年2月9日発行の『知財戦略のススメ コモディティ化する時代に競争優位を築く』(日経BP社)の第1章から抜粋して編集したものです。保有している知的財産を最大限に生かして、ビジネスの強みを生み出すための方策と最新事例を、数多くの実績を上げている法律事務所と会計事務所の視点から、ビジネスパーソンの目線と価値観に合わせてわかりやすく解説します。

 これまで、「技術と知財で勝る日本が世界でなぜ勝てないのか(第1回)」という観点から市場シェアと知財の関係についてその概要を説明したうえで、「太陽光パネルにおけるシャープのシェア低下などの具体例(第2回)」に基づいて、技術のコモディティ化が起こる時期について以下のような経験則を示した。

[(上市時期と出願件数ピーク時点)の中間時点 ]+ 20 年

 今回はまず、ネオジム磁石の出願動向と必須特許の関係を見ながら、この経験則が成り立っていることを検証してみたい。

 ネオジム磁石に関する特許は、70年代前半から毎年数件ずつ出願されている(図1-3)。こうした初期の特許は、基本的開発段階で出願されたネオジム磁石の基本的着想をカバーする特許であると思われ、必須特許であると考えてよい。実用的なネオジム磁石の基本発明は1982年頃、当時住友特殊金属に勤務していた佐川眞人氏が開発し、同社を出願人として特許が成立した。この辺りが、[1]量産的開発段階が始まった時期になるだろう。

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【図1-3】ネオジム磁石の特許出願状況(国内・出願年別)
 その後、1984年から出願が飛躍的に増え始め、2002年にピークを迎えた後、出願数は減少し始めた。筆者がこれらの特許公報の内容を調査した結果では、1990年代前半までに出願された技術にかかる特許は、[2]量産的開発段階の特許であり、その中には市場に出回っている製品に必ず使われ、かつ回避不可能な必須特許がある。しかし、それ以降は、[3]付加的機能開発段階に突入したと思われ、必須特許といえる技術はほとんどなくなった。

 つまり、ネオジム磁石の製品が発売された時期である1983年から特許件数がピークに達する2005年までの期間の中間点である1994年までは、必須特許を取得する余地があったことになる。それ以降20年間は必須特許の権利が存続しているため、特許による市場支配ができた。この前提で考えると、必須特許の出願時期である1994年に特許の存続期間(20年)を加えた2014年頃、ネオジム磁石に関する技術はコモディティ化したものとみられる。このような推測について業界関係者に確認したところ、当業界では数年前から「2014 年問題」と呼ばれ意識されていたとのことであった。