「ヒットしないものを許容しないとヒット商品は出てこない」――。

 このように語るのは東京大学の桜井貴康氏(東京大学 生産技術研究所 教授)だ。エレクトロニクス機器の製品化において、先端半導体の開発投資が莫大になり、確実に回収できる見込みがなければ試作もできない状況にある(関連記事1「半導体もメイカーズ」)。しかし、投資回収を見込めるかは、商品を試しに市場に出してみなければ、確認できない。

 桜井氏らが目指すのは、先端半導体を使う製品開発で「無駄打ち」を許容する製品開発体制の構築である。

図1 東大などが手がける開発プロジェクトの概要

メイカーズの力を活用、ヒット生む偶発性を

 新しい開発体制の構築のため、多様なIoT市場をメイカーズ(ものづくりをする個人)の力を活用して大企業などが事業化できる仕組みづくりが進行中だ(図1)。東京大学のほか、東芝、FPGA応用が得意なベンチャー企業のSUSUBOX、エレクトロニクス技術開発のディー・クルー・テクノロジーズ、図研の5者が取り組んでいる。メイカーズ向けの開発ボードに加え、開発ボードを使って市場販売できる商品の企画・開発を促すコンソーシアムを提供する(図2)。

図2 コンソーシアムのイメージ

 この仕組みを使うと、消費者としてのニーズをメイカーズ自身が商品にできるようになると同氏らは期待している。大企業は、出荷数量が事業化に十分な規模になると見込める段階になったら、既存の量産工場などを使って商品化することができる。ヒット商品をもたらす偶発性のある環境を人工的に作り出す試みともいえよう(図3)。

図3 ヒット商品をアプリとハードで生み出す仕組み

 メイカーズの活用が重要と桜井氏が指摘するのは、IoTシステムが技術者だけで応用の可能性を考えられないほど多様になるとみるためだ(図4)。「(1兆個以上のセンサーが毎年活用される)トリリオンセンサーの時代がやってくるという(関連記事2「1兆個センサー社会、始動」)。1兆個は、例えば100万種類のセンサーがそれぞれ100万個。100万種類の応用を実現するような仕組みが必要になる」(同氏)(図5)。

図4 トリリオン時代には多様な応用
図5 多様な応用に対応した仕組みを

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