前回までは,民生機器でタッチ・センサの利用が活発になっている背景と,今後の展望を解説した。今回と次回は,タッチ・センサの技術開発の詳細を取り上げる。主な方向性は二つ。抵抗膜,静電容量といった方式ごとに抱える課題を解決することと,方式の違いを超えた共通の課題を克服することである。目指すは,画面を通じて物体の質感をも伝えられるタッチ・センサの開発だ。連載の目次はこちら(本記事は,『日経エレクトロニクス』,2008年6月2日号,pp.56-59から転載しました。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

 市場の拡大と同期して,タッチ・センサは進化していく。技術開発のテーマは多岐にわたるが,端的に言えば「各方式のタッチ・センサが抱える課題を個別に解決していくこと」と,「方式の違いを超えたタッチ・センサ共通の課題を解決すること」の,二つの方向性がある(図1)。


図1 タッチ・センサ技術の進化の方向性 タッチ・センサは今後も進化を続ける。各方式がそれぞれ持っている課題や,タッチ・センサが共通して持っている課題の解決が進む。共通の課題解決では,触覚フィードバックや背面操作技術が注目の的である。 (画像のクリックで拡大)

 後者では,機械式スイッチを押したときのような操作感をユーザーに与える触覚フィードバック技術の本格的な実用化などが焦点になる。

 将来は,画面を通じて物体の質感などを伝えられるタッチ・センサも登場する可能性がある。こうしたタッチ・センサの登場は,斬新な機能を備えた電子機器の開発を促すことになろう。

マルチタッチ対応で挑む

 「iPhone」の登場以来,マルチタッチ,いわゆる多点検知に注目が集まっている。こうした機能を携帯機器で実現できるのは,これまでは主に「投影型」と呼ばれるタイプの静電容量方式のみだった。。静電容量方式より低価格で実装が容易な抵抗膜方式は,マルチタッチに対応できない。これが従来の常識だった。