機械メーカーのソフトウエア開発工数が急激に増えている。携帯電話機やデジタル家電のソフト容量の増加はよく知られているが,農業機械のような製品でもソフトの容量は大幅に増えている。それに伴って,開発上のトラブルによる納期遅れなどの危険性も増大している。
 農機,エンジン,ボート,コージェネレーション・システムなどの製品開発,生産を手掛けるヤンマーにおいても,制御ソフトの容量と開発工数の増大が課題になった。1970年代以来,制御へのコンピュータとソフトの応用が進み,初期にはせいぜい16kバイト程度だったソフト容量が1990年代に入って急増。排気ガス規制の強化といった要因もあり,現在のソフト容量は1Mバイト程度にまで増えている。
 特に農機では,兼業農家の増加によって,一層の使いやすさ,操作の容易さが求められるようになった。ユーザーの代わりに機器の細かく複雑な制御や調整をソフトが担わなくてはならなくなったためだ。
 同社は2005年,制御ソフト開発を強化するために,社内の各事業部門に分かれていたソフト開発者を集めて,「エレクトロニクス開発センター(ELC)」を設立した。「もともと機械メーカーなので,電気電子系の技術者は1割程度しかいないのに,その人材が分散していてはソフトの開発力は強化できない」(ヤンマー中央研究所エレクトロニクス開発センターセンター部長で工学博士の大久保稔氏)との考えだ。さらに,同センターはYELLと呼ばれる改革活動を開始,「客先での初期不良ゼロ」「開発効率2倍」を目標に掲げた。開発効率を2倍にするためには,開発期間を√2分の1,開発工数(開発人員)を√2分の1とし,この合計(積)で工数(人月)を2分の1にすることを狙った。
 この活動の開始に当たって,ITIDコンサルティング(本社東京)の手法で現状の課題を分析した。その結果,顕在化した問題点の対策管理はかなり実行できているが,組織というより個人に依存する傾向があり,さらに要求仕様を決めたり管理したりするところでは組織的な支援が不足している,といったことが分かった(図1)。


図1●「YELL」活動開始時の開発力の状況。「品質管理と品質保証」「欠陥管理」「課題管理」に強みがあるが,「要件開発」「品質管理と品質保証」「要件管理」で個人に頼っていることが分かった。 (画像のクリックで拡大)

重大性と難易度でリスク分析

 YELL活動の三本柱は,(1)開発上のリスク管理(2)開発プロセス改革(3)人材育成。このうち,(2)と(3)はこれまでも取り組んでいたことだが,(1)の「リスク管理」は全く新しい活動として始めた。

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