日本が世界をリード,産と官の橋渡し役に ※NIKKEI MICRODEVICES特別編集版『PVJapan 2008 ナビゲータ』(2008年7月発行),PP.8-13から転載。所属,肩書きは当時のものです。

問◎太陽電池は発明から既に50年以上が経ちます。ある意味古い技術の太陽電池が,なぜ今になって注目を集めているのでしょうか。

答◎やはり環境意識の高まりが大きいと思います。業界サイドはともかく,最終消費者までもが電力消費を気にし始めたことで,業界各社が一つの事業として成り立つ確信を持てるようになったのではないでしょうか。

 京セラの場合,太陽電池に取り組んで32年になりますが,しばらく苦しい時期が続きました。私自身,京セラで1993年から6年間太陽電池事業を担当しましたが,マーケットを見つけにくい状況でした。それがやっと自立した事業といえるようになったのはここ3~4年のことです。

 産業として一本立ちした今では新規参入も多く,その意味では若干バブルといえなくもありません。しかしエネルギー産業はもともと巨大なマーケットです。しかも環境への貢献を誰にも分かりやすく果たせるので,注目を集めているのだと思います。

問◎太陽電池業界に追い風が吹く中,取りまとめ役である太陽光発電協会(JPEA)の会長に就任することになりましたね。

答◎太陽電池は業界に直接携わるメーカーだけでなく,政府や消費者など周囲の理解と期待の下で発展してきた歴史があります。そうした期待に応えて,太陽電池の産業を健全に育てていく役割を担うのがJPEAです。活動の幅を広げていくために,任意団体から有限責任中間法人に衣替えしました。会長の責務として,業界の責任と方向付けを明確に示していかなくてはならないと考えています。

 太陽電池は工業製品の一種と見られがちですが,海外では社会インフラ整備の一環として市場が形成された経緯があります。社会インフラとなると産業界だけで普及を進めるのは困難です。やはり産と官の連携が必要であり,JPEAはその橋渡し役を務めていきます。

問◎つまり国にも,ドイツのフィードイン・タリフのような財政支援を求めていくということですか。

答◎その必要があると思っています。太陽電池普及への最大の課題はやはりコストです。一般家庭レベルの3kWの太陽電池で比べた場合,10数年前は600万円していたものが,業界の努力で今は200万円を切るレベルにまで下がりました。しかし当時に国が行っていた補助制度は,2005年度までで廃止されており,コスト低減効果が打ち消されてしまっているのが実情です。幸い,国の側にも何らかの措置が必要と考えている方は少なくないようです。JPEAは積極的に国と話し合いを持ちたいと考えております。

 ただ,いくら太陽電池は環境に優しいといっても,「正義の味方」という意見の通し方には無理があります。国には太陽電池の業界とは別次元の,財政再建という大きな課題もあります。国が置かれている立場も踏まえながら,現実的な解を求めて協議していきたいと思います。

問◎世界に目を向けると,太陽電池の世界市場での日本メーカーの地位低下を懸念する声もあります。

答◎確かに世界市場のシェアでは,日本メーカーにとって良いニュースはあまり聞こえてきません。ただ裏を返せば,それだけマーケットが活性化していると見ることもできるでしょう。この市場で新しく事業を興したいと考えている企業が増えているわけですから。個々のシェアはともかく太陽電池市場全体としては,むしろ歓迎すべきと思っております。

 もちろん日本勢のシェア低下が,このまま続いていいわけではありません。シェア奪回のため,今後は日本が持つノウハウを極め,世界へ発信していくことが大事と考えております。家電などと違って太陽電池は20~25年は安定的に稼働する必要があります。品質に対するユーザーの厳しい目で鍛えられた日本メーカーにとって,太陽電池の市場は底力を発揮できるいいチャンスではないかと思います。日本が品質面で世界のリーダーシップを取り,太陽電池に対するユーザーのイメージを高めていくことが,太陽電池の本当の普及につながるのではないでしょうか。それを忘れてただ単に売れればいいという考えでいると,下手をすれば一過性のブームに終わってしまいます。

問◎例えば品質に対する認証を日本主導で作って,世界に広めていくというアプローチもありそうですね。

答◎既に欧州ではTUV(Technischer Uberwachungs-Verein)という認証機関があり,日本にもJET(電気安全環境研究所)による品質認証があります。ただ,いずれもグローバル・スタンダードにはなっていません。そこでJPEAは,JETによる認証が世界の市場で幅を利かすように,そのメリットを訴えかけていきたいと思っております。そのための一つの取り組みが,このほど開催する「PVJapan 2008」となります。

問◎PVJapan 2008の見どころを教えてください。

答◎JPEAはこれまでも,太陽電池に関するイベントを単独で行っていましたが,なかなか多くの人に見てもらうことができませんでした。今回のPVJapan 2008は,製造装置メーカーの多くが加盟するSEMIと共催で行うことで,川上から川下までより幅広い層の方に,日本の太陽電池の技術レベルの高さを実感してもらおうと考えております。

 そのほか,市民向けのフォーラムなど,エンド・ユーザーにも太陽電池の利点や日本メーカーの優れた技術を体感できるイベントも企画しており,市場のすそ野拡大に貢献していく方針です。

プロフィール
川村 誠
 1949年名古屋市生まれ。1973年静岡大学工学部を卒業し京セラへ入社。1993~1999年ソーラーエネルギー事業部副事業部長として太陽電池事業に携わる。2005年6月代表取締役社長。2006年4月から代表取締役社長 兼 執行役員社長。2008年5月28日のJPEA通常総会でJPEA会長に選任。