図5 この基板の上で組み込みソフトウエアを開発している (画像のクリックで拡大)

 OSは,いわゆる組み込みLinuxを採用します。GUIは,GTK+などのライブラリを使ってC言語で実装します。GUI動作エンジンのようなミドルウエアは使いません。組み込み機器のGUIは,反応速度こそ命。ミドルウエアを間に挟んで反応速度を落としたくありません。

——価格はどれくらいになりますか。

岩佐氏 まだ決めていませんが,3万円は超えないようにする予定です。家電量販店ではなくオンライン・ショップで販売します。例えば,ブロガーの皆さんに使ってもらった上で,アフィリエイトを通じて拡販できないかと考えています。

 サーバーの利用コストを月額料金で徴収するといったビジネス・モデルは今のところ考えていません。運営コストの一部は,有料のプリント・サービスや会員向けメールの広告などで賄います。

 重要なのは,使い勝手のいいサービスを用意することで,ユーザーに我々の機器を継続的に買ってもらうことです。一般にデジタル・カメラのユーザーは,買い替え時に他社ブランドに簡単に乗り換える傾向があります。優れたサービスを提供できれば,ユーザーの囲い込みにつながります。こうしたマーケティング上の利点は,サーバーの運用コストを補って余りあるほど高いですよ。

 もちろん月額料金を取らない以上,運用コストは極限まで安くする必要がありますし,我々にはそのノウハウがあります。大手機器メーカーがこうしたサーバーを運用すると,運営技術について割り切りができず,信頼性は高いがコスト高の運用になりがち。我々のもう一つの強みは,社内に家電系の技術者とWeb系の技術者が混在しており,割り切りのポイントを見極められることです。

 発売時期は未定ですが,2008年度内に発売することを目指し,資金調達を進めているところです。

——大手機器メーカーではなくベンチャー企業でデジタル機器を開発する上で,苦労していることは何でしょうか。

岩佐氏 現在進行形で苦労しているのは,部品の調達です。小ロットではLSIや部品を売ってもらえないことがあります。「いや,ウチは10万個からでないと…」などと言われることも。ただ我々の場合は,部品調達を製造委託先にお任せできるケースが多いので,助かっています。ハードウエアの設計・製造の委託が可能になったことで,数年前と比べれば日本でもハードウエア・ベンチャーの起業がはるかに容易になりました。

 もう一つは,やはり資金の調達です。ソフトウエア・ベンチャーなら,最初の1年は3000万円くらいで運営できますが,ハードウエア・ベンチャーの場合,初年度から億単位のお金が必要になります。それでも小ロットの製品の製造が可能になったことで,数年前に比べればハードルが低くなったのは確かです。

 人材の募集には,ブログの執筆が一つの助けになりました。私がブログに書いたネット家電の設計思想に共鳴した学生や技術者が,このデジタル・カメラの開発に関わってくれています。

日経エレクトロニクス2008年6月2日号にて,岩佐氏が大手機器メーカーを辞めてベンチャー企業の経営に関わった経緯を紹介したインタビュー記事を掲載する予定です。

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