写真 CO中毒事故を起こしたのと同型のパロマ工業製ガス瞬間湯沸かし器の内部構造
写真 CO中毒事故を起こしたのと同型のパロマ工業製ガス瞬間湯沸かし器の内部構造
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図1 問題のガス瞬間湯沸かし器のシステム全体の構成図(クリックすると大きな画像が開きます)
図1 問題のガス瞬間湯沸かし器のシステム全体の構成図(クリックすると大きな画像が開きます)
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図2 制御ボックス内に収められた回路の回路図。スイッチとリレーを組み合わせた構成
図2 制御ボックス内に収められた回路の回路図。スイッチとリレーを組み合わせた構成
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図3 全体構成を整理して書き直してみた。5種類のセンサを使って作動を制御しているのがわかる
図3 全体構成を整理して書き直してみた。5種類のセンサを使って作動を制御しているのがわかる
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図4 ポイントだけ整理して書き直した回路図(クリックすると大きな画像が開きます)
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 パロマ工業が1980~1989年にかけて製造し,CO中毒事故を多発して問題になっている「半密閉燃焼式ガス瞬間湯沸かし器」(写真)のシステム全体の配線図(図1)と制御ボックス内の回路図(図2)を入手した。

 入手したシステム全体の配線図は,事故を起こしたのと同型の湯沸かし器ではどれでも,筐体カバーの裏に貼り付けてあったという。回路図の方はサービス・マニュアルとおぼしき冊子に記載されていた。つまりどちらも,同型製品のメンテナンスを手掛ける業者なら容易に入手できたと思われる。

熱電対の起電力でガスの安全弁を開閉

 配線図と回路図を見て分かるように,ガスの供給/遮断の制御に熱電対の起電力を利用する方式が採用されている。安全装置を構成する他の回路にはリレーとスイッチを使っている。

 では動作を順に追いながら説明をしよう。オリジナルの図では複雑すぎてわかりにくいので,整理した図を起こしてみた(図3,4)。

 まず,全体の構成を見てみよう。半密閉燃焼式ガス瞬間湯沸かし器は,屋内から吸気し,燃焼後の排気を屋外に排出する。問題を起こした湯沸かし器はファンで強制排気する。今回の問題になっているCO中毒事故はいずれのケースでも,直接的な原因は排気ファンの停止によって起こった。正確には,排気ファンが停止して燃焼で生じたCOが屋内に漏れだしているにもかかわらず,ガスが遮断されず,燃焼が継続したために事故に至った。

 事故を起こしたパロマ工業のガス瞬間湯沸かし器は,5種類のセンサを使って作動を制御している。まず,バーナー直下に熱電対と過熱防止器(温度ヒューズ),水の流路にマイクロ・スイッチを使った水流センサ,そして排気ファンの近くにハイリミット・スイッチとサーマル・スイッチと呼ぶバイメタルを使った二つの温度センサを配置する。

ツマミを捻ると電源オン,水が流れるとファンが回り出す

 ガス開閉ツマミを捻ると制御回路のメイン電源がオンになる。種火が付くことで,熱電対の一端が加熱されて起電する。この起電力でマグネット安全弁を開く。つまり種火がついている間は,マグネット安全弁は開き続ける。風などで立ち消えすると,熱電対が冷えて起電力が失われるので,安全弁が閉じる。これがガス遮断の基本回路になる。この部分の動作だけを見ると,電源は必要ない。

 ただし,この回路の途中には過熱防止器(温度ヒューズ)と制御ボックス内の排気あふれ防止制御リレーが直列に接続されている。前者はバーナーが異常過熱した際にヒューズが切れる。後者は制御回路に電源が入ることで導通するが,ハイリミット・スイッチが高温を検知するとリレーが作動して回路を切る(詳しくは後述)。いずれも熱電対とマグネット安全弁の回路を遮断するため,安全弁が閉じ,ガスが遮断され,火が消える。

 種火の着火を確認し,ガス開閉ツマミをさらに捻ると,ガス・ガバナー,水ガバナーが開き,湯沸かし器が作動する。バーナーが点火され,水が流れ出す。水流センサーは水が流れ出したことを感知してオンになる。これによって制御回路内のファン制御リレーが働き,排気ファンが回り始める。排気ファンは湯沸かし器の利用後,ツマミを戻して水流を止めても,排気管内がある程度冷え,サーマル・スイッチがオフになるまでは回り続ける。こうやって排気管の過熱を防ぐ仕組みだ。

 もし,何らかのトラブルで排気ファンが回らずに,燃焼が続いた場合は排気管内が高温になるため,ハイリミット・スイッチが働く。これはバイメタル式の温度センサで,排気管内が設定より高温になると切れる。すると排気あふれ防止制御リレーへの通電が切られるので,熱電対とマグネット安全弁の回路が切れるという仕組みだ。

どこを改造すると安全装置を無効化できるか

 これまでの説明をまとめると,正常な状態で,ガスが供給されるためには,以下の条件をすべて満たす必要がある。

  1. 着火しており熱電対に起電力が発生している
  2. バーナー周りが異常過熱していない
  3. 制御ボックスに電源が供給されている
  4. ハイリミット・スイッチが動作していない

これらのうち,一つでも条件が欠けた場合はガスを遮断する仕組みになっている。ではなぜ事故が起こったのだろうか。

 パロマ工業は,今回の事故のうち,約半数が安全回路を無効化する「不正改造」が原因で,残りの一部が機器と安全装置の経年劣化,および原因不明(調査中)であると説明している。

 経年劣化とは,制御ボックスや水流センサーの故障で,排気ファンが回らないのに着火してしまうケースを指す。水流センサーが固着してオフのままで動かなくなったり,基板上ではんだ割れなどが起こり,モーターに電力供給する配線のどこかが切れるとこうした状態になる。ただ,このような場合でも一定時間燃焼が続くと排気管の温度が上がるのでハイリミット・スイッチが動作し,ガスが閉じられるので,事故には至らないはずだった。しかし,実際に事故は起こっており,こうしたケースではバーナー部の経年劣化などの理由でCO発生量が通常より多く,ハイリミット・スイッチが動作するまでの短時間で高濃度のCOが発生し,屋内に滞留してしまった,ということのようだ。

 一方,不正改造とは,排気あふれ防止リレーの接点出力を短絡する改造を指す。こうすれば,制御ボックスの状態にかかわらず,火が付いて正常に燃焼している限り,マグネット安全弁は開き続ける。上記の3と4をキャンセルするわけだ。事故はこうした改造が施された状態で,AC電源が抜けるなどの理由で排気ファンが止まったせいで起こった。不完全燃焼で生じたCOが屋外に排出されず,屋内に滞留したからだ。

 問題の機種では,制御ボックスに収められた排気あふれ防止リレーの接点出力が,ボックスの外の端子盤にいったん取り出されていた。この端子盤を中継して,熱電対とマグネット安全弁の回路に接続していた。つまり,端子盤を短絡させることで,簡単に「不正改造」が可能な構造になっていた。

 これまで見てきたように,今回の製品の安全回路は,何らかの異常があると基本的にガスを止める方向に働く。このため,制御ボックスは通常,着火できなくなる方向で故障することが多い。このような状況からパロマ工業は,こうした故障時に本来行うべき制御ボックス交換をせず,応急的な修理として不正改造が行われたと推測している。

 だが,新聞報道などによると,当該製品の制御ボックスは特に寒冷地などで,基板のはんだ割れを起こして故障するケースが多かったと言われている。制御ボックスの故障の多発が,危険な改造を誘発した可能性もある。

【追記】
 なお,Tech-On!の以前の記事で,端子盤周りの配線と,代表的な不正改造法を公開している(この<画像>)。これは,7月18日の記者会見でパロマ工業が公表した資料の一部であるが,回路図と突き合わせると一部表記が間違っていることが分かる。下側の端子からの配線の1本は「排気溢れ防止装置」につながっているとされているが,これは「過熱防止器」の間違いである。この点についてはパロマ工業も認めている。ちなみにこの図でバーナーコントローラーと呼ばれているのは,制御ボックスを指す。全部で5種類ある改造法のいずれもが,マグネット安全弁への配線と過熱防止器への配線を短絡させる意図を持つことが分かる。