本コラムでは、日本メーカーの管理者や社員が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
悩み
新規事業を開発する部門の管理者を務めています。世界的に競合企業が増えており、会社の主力製品の業績が年々落ちています。そこで、昨今の円安の追い風を受けているうちに、新しい事業を生み出すことが急務となっており、比較的発想力がありそうな若手社員から中堅社員の活発な提案を期待しています。しかし、残念ながら提案数が少なくて困っています。社員の背中を押す良い施策はありませんか。

編集部:今、輸出型企業を中心に円安の好影響を受け、業績が好調な日本企業が目立ちます。自動車メーカーはその好例でしょう。一方で、コスト削減のために設けた海外工場をたたむ事態に陥るなど、事業の転換を迫られている日本企業もあります。業績が好調な企業も、いつ業績が悪化するか分かりませんから、常に新規事業を探しているというのが実態です。そこで、日本企業のトップはよく「新しいことに挑戦せよ」と発破をかけるのですが、優れた提案どころか、提案自体が少ないというのでは、管理者としては胃の痛いところですね。

肌附氏―挑戦心がない人に、メーカーの技術者は務まりません。新しいことや付加価値を生み出さないメーカーが生き残ることはできないからです。みんな分かっているはずなのに、新しい提案がなかなか出てこないと嘆く日本企業は実際に多いですね。私もよく相談を受けるので、なぜかと考えてみたのですが、会社の風土や環境が関係しているのではないかと思うようになりました。

編集部:トヨタ自動車の場合、社員が新しいことに挑戦できる風土・環境が整っているということでしょうか。

肌附氏―そうかもしれません。平均的な日本企業の風土・環境と比べると、具体的には次の5つの点でトヨタ自動車は際立っていると思います。
[1]本人に意欲があり、前向きな提案であればできる限り挑戦させる。
[2]たとえ失敗しても、再挑戦の機会が与えられる。
[3]考え方や方針は「金太郎飴」(皆が同じ)だが、こと技術となると個人の意見を尊重する。
[4]人に対しては優しいが、仕事には厳しい。特に、技術者にプロジェクトを任せたときなどは、最後まで本人にやり遂げさせる厳しさがある。
[5]ムダや仕事の質の低さには厳しい目を向けるが、改善や新技術の開発にはお金を惜しまない。

編集部:仕事に関してはとても高い水準が求められるのでしょうが、社員の積極的な挑戦に対して背中を押してくれる感じが伝わってきますね。しかし、意地悪な見方かもしれませんが、本当に失敗が問われないのか疑ってしまいます。[2]たとえ失敗しても、再挑戦の機会が与えられる、という部分です。似たようなことを言っていた企業で、失敗の責任を社員が取らされた話を聞いたことがあるからです。

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