(f)機器全体を俯瞰しながら最適化することを心掛ける。これができないと,日本のワイヤレス製品は世界での競争に負けてしまう。ワイヤレス製品が高度化し複雑化しているので,若い技術者は,学生から社会人になり実務に就くと,いきなり高い技術のハードルに直面する。筆者の世代は,ワイヤレス通信のアナログ時代からデジタル化への変化を経験してきたため,ワイヤレス通信の全体が見渡せる世代であり幸せであった。若い世代の技術者は,このようなベテランをうまく利用してほしい。

 ただし,ベテランの多くは,「高周波は職人芸で,CADとかシミュレーションなんて信じられるか」と居直ってしまい,若手と意見が合わない場合がかなりあるので注意を要する。CADもシミュレーションも不可欠だが,残念ながら高周波設計の職人にはコンピュータ・アレルギーがあるようで,若い技術者に比べると使いこなせない人が多い。しかし,若手にはない技術や多くの経験で培われた勘を身に付けている。これからの設計は,ベテランと若手が協力し,お互いの利点を活用し合うようにして全体を見渡せる技術を確立していく必要がある。

 ベテランも若手も,謙虚で親切でなければならない。筆者の尊敬するある技術者は,「技術はとても素直で正直なものである」と述べているが,自分の技術におぼれず見栄を張らなければ,自然に協調し助け合う雰囲気ができるものである。

    *    *    *

 以上,筆者の経験に限られるが,ワイヤレス製品の設計現場で感じていることを書いてみた。設計に携わる読者から見ると,それは違うぞ,受け入れられない,と思われることもあるだろう。設計のやり方は多様であり,どのような設計手法を業務に取り込むかは機器メーカーによって違うので,それは当然のことである。小さな設計会社の経営者から見たワイヤレス製品の設計例として,読んでいただけると幸いである。

「どんな通信相手でも」が4G? ソフトウエア無線に注目

 次世代携帯電話,いわゆるBeyond IMT-2000やB3G(Beyond 3G)と呼ばれる第4世代(4G)携帯電話は,第3世代の携帯電話とコンセプトが変わってくるかもしれない。

 携帯電話は第1世代から順々に発展してきた。最初は,「いつでも,どこでも,誰とでも」というキーワードで始まったが,その後マルチメディア化を意識して,「どんな情報でも」が加わった。つまり「いつでも,どこでも,誰とでも,どんな情報でも」を実現するものになった。

 4G携帯電話のコンセプトも,当初はこの枠内にあった。ワイヤレス通信の標準化を行う国際組織ITU-R(International Telecommunication Union- Radiocommunication Sector)の2003年6月の勧告では,4Gは高速移動時に通信速度が100Mビット/秒,低速移動時に1Gビット/秒を実現するシステムとしていた(ITU-R M.1645「Framework and overall objectives of the future development of IMT-2000 and systems beyond IMT-2000」参照)。コア・ネットワーク(基地局間を結ぶバックボーン)はインターネットをベースにすべきと勧告していた。

図D-1 4G携帯端末機器のコンセプト例
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 4Gのコンセプトは依然として未確定だが,最近は新たな考え方が主流になりつつあるように思う。つまり「いつでも,どこでも,誰とでも,どんな情報でも,どんな通信相手でも」利用できるようにするユビキタス通信の考え方が加わったものが4Gといわれるようになってきた(図D-1)。

出典:2007年4月9日号 NE PLUS
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

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