日本を代表する研究機関である産業技術総合研究所。世界的にレベルの高い数々の成果を挙げ、現在も数多くのテーマについて事業化を視野に入れた研究開発が進む。そして、研究開発された技術を事業化に結び付けた産総研発のベンチャー企業は120を超える。果たして、産総研で研究開発が進む技術や産総研発のベンチャー企業が手掛ける技術でどのようなことが可能になるのであろうか。

 今回、日経テクノロジーオンラインでは、産総研で事業化を視野に研究開発が進む技術や産総研発のベンチャー企業が展開する技術の中から選りすぐりの3テーマについて連載で紹介する。連載第1回で紹介するのは、産総研発のベンチャー企業であるつくばテクノロジーである。2005年設立の同社が手掛けるのは、非破壊検査装置だ。非破壊検査装置の国内市場規模は現在4000億円を超え、年率10%成長を続ける見通しである。電力や水道、橋梁やトンネルといったライフライン、石油プラントや発電施設などの巨大設備などの劣化監視、さらには製品の生産中や出荷前の良品検査など潜在需要は大きく、今後も右肩上がりで拡大する見込みだ。世界規模では、日本国内の数十倍の市場があるといわれる。

 こうした市場に向けて、つくばテクノロジーが展開するのが、レーザー超音波可視化検査装置(LUVI:Laser Ultrasonic Visualizing Inspector)や小型X線検査装置である。既存の検査手法に比べ、対応する用途が広く、さらに検査効率を数倍に高められるという。同社の技術の特徴や狙いについて、同社 代表取締役社長の王 波氏に聞いた。(聞き手は、大久保 聡=日経テクノロジーオンライン 編集委員)

図版説明
つくばテクノロジー 代表取締役社長の王 波氏

――つくばテクノロジーが手掛ける非破壊検査装置の特徴を知りたい。

王氏 当社が手掛ける装置は、レーザー超音波可視化検査装置(LUVI:Laser Ultrasonic Visualizing Inspector)と小型X線検査装置の大きく分けて2種類ある。
図1 つくばテクノロジーが手掛ける製品や技術
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 LUVIは、検査対象物の表面のみならず内部に欠陥があるかどうかを即座に判別できるのが特徴だ。対象物が複雑な形状であっても、また広い面積を持つような大きなものであっても、瞬時かつ遠隔で一度に評価できる。評価場所を2次元映像で可視化しており、欠陥があればその箇所を検査の素人が見ても“異常”と容易に分かることも特徴である。超音波を利用する他の検査技術に比べると検査スピードは5~10倍は速く、検査効率を高められる。内部は表面から深さ100mm内の欠陥を1mm程度の精度で検知可能である。
図2 LUVIの評価例。写真中央やや左にある配管が被検体。写真左にある白い物体からレーザー光を被検体に照射し、被検体に取り付けた圧電センサーで被検体に発生する超音波を検知する。配管内部(表面からは見えない)に幅0.2mm、長さ4mm、深さ1~2mmの傷をつけ、それが検知できるかどうかを確認した。
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図3 図2で示した評価結果例。画面中にある同心円状のものは、配管内の欠陥を検知したことを示している。
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 一方、小型X線検査装置の特徴は、手のひらに載るくらい小さく、かつ直流電圧で動くためにバッテリー駆動が可能かつ省電力なので単3電池1本でも駆動、さらにパルス動作によって漏洩線量が少ないことである。ロボット等に組み込んだ遠隔での検査にも対応できる。単3電池1本で100枚程度撮影可能だ。なお、この製品はLiイオン電池を使うことができ、その場合は5000枚程度撮影できる。
図4 販売中の小型X線検査装置
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 これらの検査装置の基本技術は、産業技術総合研究所での研究開発が基になっている。当社は開発した技術を事業化するとともに、性能向上や用途拡大に向けたさらなる開発を続けている。

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