発電時にCO2を排出しない技術として脚光を浴びる原子力発電。世界中で開発競争が激しくなる中で,ひときわ注目を集めるベンチャー企業がある。Bill Gates氏が出資する,TerraPower社だ。同社の開発する原子力発電システムは,経済性や安全性,核不拡散などを同時に満たすという。TerraPower社は,この夢のような原子力発電システムの実現に向けて,世界中から技術を呼び込み始めた。

夢の原子力発電を目指す

 2006年のある日。知的財産投資会社の米Intellectual Ventures Management, LLC(IV社)に,さまざまな分野の専門家が集まっていた。同社で恒例となった,将来技術について議論する会議「invention session」を開催するためだ。IV社の二人の創業者が共に米Microsoft Corp.出身ということもあってか,会議室にはBill Gates氏の姿もあった。

 会議では,エネルギー問題の解決に向けて,新たな原子力発電システムの開発にも話が及んだ。安全性や経済性に加えて,核不拡散や廃棄物の削減といった要件を満たすにはどうしたらいいのか。一つの解として,燃料交換を長期間不要とするアイデアが提示された。アイデア自体は,古くからあるものだ。会議に参加した原子力発電の専門家であるLowell Wood氏も,「水爆の父」として知られるEdward Teller氏との共著で1996年にこのアイデアの論文を発表している。しかし,実現には至っていない。

 今ならスーパーコンピュータなどを使って,開発を加速できるかもしれない。そう考えたIV社は,ベンチャー企業の米TerraPower, LLCを設立して,理想の原子力発電システムの実現を目指すことを決める。出資者にはIV社のほかに,Bill Gates氏も名を連ねた。

ほかのエネルギー技術に波及

 理想の原子力発電システムの実現を目指しているのは,TerraPower社だけではない。発電時にCO2を排出しない技術として脚光を浴びる原子力発電システムは,世界中で開発が活発になっている。

『日経エレクトロニクス』2010年8月23日号より一部掲載

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出典:解説
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