リコーのデジタル・カメラ事業が元気だ。日本のカメラ・ファンを喜ばせる商品を次々と発売し,高い支持を集めている。だが7~8年前,同社のカメラ事業は市場でも社内でも,全くといっていいほど評価されていなかった。そこから復活した背景には,ある人物の決断と行動があった。

 リコーのデジタル・カメラが,日本の写真好き,カメラ好きな人々の間で,大変な人気を集めている。

 象徴は,価格.comが毎週発表する「売れ筋ランキング」である。リコーのカメラは度々,レンズ一体機の上位に顔を出している。高級コンパクト機として売れに売れた「GR DIGITAL」シリーズだけではない。2009年上半期においては,普及価格帯の「RICOH R10」と,その後継「CX1」が,並み居る強豪を差し置いて一時,第1位になった。

 リコーのカメラは,価格.comに集う無数のカメラ好きにとって注目の的だ。前述の機種に対する書き込みは,いずれも5000件以上。これほどの書き込みは,キヤノンやソニーの機種でもまれである。

 リコーのカメラ事業は,7~8年前まで「やる意味があるのか」と社の内外から問われるほど,ひ弱だった。現在もリコーの世界台数シェアは低い。テクノ・システム・リサーチは,0.2%とみている。

 しかし,価格.comにおける現象は,リコーが特定のユーザー層に受けるカメラを,確実に提供する企業に生まれ変わったことを意味している。この効果は決して小さくない。例えば2009年,大多数のカメラ・メーカーにおいて販売台数は前年割れになる見込みだが,リコーはCX1やGR DIGITALの新型の投入によって前年と同等以上の台数を売り上げると,市場調査会社や他メーカーは予測している。海外市場を開拓できる兆しも見え始めた。日本での高評価が影響しやすい台湾や香港といった市場で,実際に売り込みが容易になっているという。

 リコーのカメラ事業はいかに復活したのか─。この答えのカギを握る人物が,湯浅一弘(執行役員 パーソナルマルチメディアカンパニープレジデント)だ。リコーは,カメラ事業にごく限られた経営資源しか割り当ててこなかった。湯浅のリーダーシップの下,設計,商品企画,販売といった部門の従業員が奮闘しなければ,復活はあり得なかった。

『日経エレクトロニクス』2009年7月27日号より一部掲載

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出典:ドキュメンタリー
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