広域SDNの研究開発プロジェクト「O3」を解説する後編。前回は全体像と研究開発領域の中から「統合制御基盤」と「光通信」を紹介した。今回は「パケットトランスポート」「無線通信」「ソフトウエア通信機器」「ガイドライン」について解説する。(本誌)

表1 O3プロジェクトの研究開発領域
グレーの項目は前編(2014年6月号)で解説した。
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 前回に続いて、広域SDNの研究開発プロジェクトである「O3」の研究開発領域を紹介する。今回は「パケットトランスポート」「無線通信」「ソフトウエア通信機器」「ガイドライン」について解説する(表1)。

O3=NEC、NTT、NTTコミュニケーションズ、富士通、日立製作所の5社を中心に、広域ネットワークのSDN化を目指す研究開発プロジェクト。2013年度から3カ年を予定。

パケットトランスポートのSDN化

 パケットトランスポートとは、大容量転送を担う光トランスポート網の上に、インターネットやモバイル網のような各種ネットワークサービスシステムを効率的・高信頼に統合するシステムである。個々のネットワークサービスに対して、その要件を満たす仮想ネットワークを光トランスポート網から切り出し、同時に光トランスポートと連携。ネットワーク資源の効率的で高信頼な運用を可能にする。

 このようなマルチレイヤーシステムをSDN化する目的の一つは、従来は独立して管理されてきた設備投資や運用を最適化して、トラフィックの変動やサービスの変革に対して柔軟かつ迅速に対応できるようにすることだ。

 例えば4K/8Kなどの広帯域VOD(ビデオオンデマンド)に必要となるオンデマンド型の帯域保証サービスがある。パケットトランスポートシステムと光通信システムが協調動作することにより、大容量トラフィックの集中を回避させ、仮想ネットワークごとに独立した経路管理の実現を目指している。サービス事業者やエンドユーザーに対してサービスを安心して安定的に提供するためには、マルチサービス多重、統合管理制御、マルチレイヤー制御技術といった技術開発が必要となる

技術開発が必要となる=詳しくは次の講演資料を参照してほしい。青山、“SDN時代におけるネットワーク変革に向けて”、SDN JAPAN 2013。URLはhttp://www.sdnjapan.org/images/2013spdf/0919_01hitachi.pdf

 さらに、インターネットやVPN、モバイルなどの融合が本格化する次世代ネットワークにおいては、SDNによる集中制御型のパケットトランスポート技術と分散制御型のIPネットワーキング技術が不可欠であり、それらの連携が重要となる。

 そこでO3プロジェクトでは「マルチレイヤー統合管理モジュール」を開発した。SDNをベースとするパケットトランスポート(MPLS-TP)ネットワークと分散制御型のIPネットワークを統合的に管理するものだ。このほか、リソースプールとして管理しているMPLS-TPネットワークリソース群から要求された資源量を動的に確保する「MPLS-TPネットワーク制御機能」や、マルチレイヤー統合管理モジュールへサービス要求を実行するSDNアプリケーションも開発した。マルチレイヤー統合管理モジュールは、SDNアプリケーションからの要求に応じてMPLS-TPネットワーク内から最適なネットワーク資源を動的に確保し、IPネットワークのトラフィックに割り当てる(図1)。

図1 パケットトランスポートシステムのSDN化
SDNをベースとするパケットトランスポート(MPLS-TPネットワーク)と、分散制御型のIPネットワークを統合管理する。
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 開発したマルチレイヤー統合管理モジュールを、1000台規模のノードで構成するネットワークをエミュレートしたテストベッドで評価した。MPLS-TPネットワーク内の帯域をIPネットワークのトラフィックに迅速かつ動的に割り当て可能なことが確認できた。

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