拡大市場“支える”架台メーカー 選ばれる理由

架台一体型のコンクリート基礎で、施工性や耐久性を向上

発電サイトの地元企業と納入を分担、1日のパネル設置枚数は2倍に

2015/06/24 00:00
加藤 伸一=日経BPクリーンテック研究所

 北九州市にある響灘地区は、日本海に面した埋め立て地にある。新日鉄住金や旭硝子、日本コークス工業、電源開発などの工場や事業所、廃棄物処分場のほか、北九州エコタウンの実証実験場などが立地し、最近では、広大な土地を生かして、メガソーラー(大規模太陽光発電所)や風力発電所の集積地としても知られる。

 廃棄物処分場には、埋め立て完了後の浄化期間中、建物の建設や人の立ち入りなどに制約がある。メガソーラーを建設する場合、地盤にコンクリート基礎を築くという、一般的な工法を採用できない。廃棄物の上に築いた盛り土に雨を浸み込ませ、浸み込んだ水を、ポンプで吸い上げて土地を浄化するプロセスを阻害するためである。

 それでも、メガソーラーが、廃棄物処分場の有効活用の一つとなっているのは、地盤に手を加えずに施工する工法が考案されたからとも言える(図1)。

図1●基礎と架台を一体化した「ソーラーキーパー」で、地盤に手を加えず施工
写真は、ひびき灘開発が運営する出力1.99MWのメガソーラー。小倉セメント製品工業が納入(出所:日経BP)
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 例えば、響灘地区のメガソーラーでは、基礎から架台まで一体化したコンクリート二次製品を置き、その上にレールを乗せるだけで、太陽光パネルを固定する工法「ソーラーキーパー」が多く採用されている。ひびき灘開発が運営する出力1.99MWのメガソーラーなどが採用している(メガソーラー探訪の関連記事)。

 「ソーラーキーパー」は、一般的な、基礎と架台の組み合わせで必要な、複雑な組み立てや調整の手間が少ないため、施工の手間を低減できる特徴がある。

 一般的な基礎と架台の組み合わせに比べて、「ソーラーキーパー」を使うと、1日あたりの太陽光パネルの最大設置枚数は、2倍以上に増えるとしている。

 また、太陽光パネルを固定するレールと金具以外は、すべてコンクリート製で、その重みによって、基礎を築かなくても設置に必要な強度を確保できる。コンクリート製であるために、金属製の架台に比べて、風圧などへの耐久性に優れる(図2)。

図2●施工性、風圧などへの耐久性、設置強度、除草などのメンテナンス性に優れる
写真は、ひびき灘開発が運営する出力1.99MWのメガソーラー(出所:日経BP)
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 利点は、施工性や設置強度、耐久性にとどまらない。パネルの固定部以外はコンクリート製のため、塩害に対する耐久性が高い。

 さらに、太陽光パネルの下をコンクリートが覆うために、雑草が生えない効果もある。これによって、除草費用を削減できる。点検時にも、雑草などが視覚を邪魔せず、スムーズに作業できる効果があり、メンテナンス全般で負担が減り、O&M(運用・保守)コストを低減できる。

 採用の検討時には、基礎単体としての価格差から、コストが高いと評されることがあるものの、これらの利点が評価され、リピート採用が多いという。

通信系土木用が主力の不二高圧コンクリートが開発

 「ソーラーキーパー」は、通信関連の土木工事向けにコンクリート二次製品を供給する不二高圧コンクリート(熊本市)が開発した。2014年度の売上高は31.8億円、従業員72人の中堅の企業だ。

 自社で供給するだけでなく、日本全国のコンクリート関連会社による普及団体「ソーラーキーパー研究会」を組織し、それぞれの地域の会員会社が全国各地に供給している。

 不二高圧コンクリートは、1965年の設立後、日本電信電話公社の通信線の敷設向けなどにコンクリート二次製品を供給してきた。特に、ハンドホールと呼ばれる地中埋設用を強みとし、九州電力や日本道路公団にも供給してきた(図3)。

図3●地中埋設用のハンドホールを、太陽光発電所の送電にも活用
写真は、熊本市南区城南町の出力550kWの太陽光発電所(出所:日経BP)
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 その後、日本電信電話公社が民営化されてNTTとなり、施工件数が減った。通信線が光ファイバーに変わり、省スペース化と長距離化が進んだことも、コンクリート二次製品の使用量が減る要因となった。

 そこで、河川や水路の上に張り出した歩道の施工に使うコンクリート二次製品を開発した。元々、こうした歩道の施工には鉄材が使われていたが、錆びて腐食し、損傷する問題があった。コンクリート二次製品で代替することで、信頼性を高めた点が評価され、採用が進んだ。

 太陽光発電用の架台一体型の基礎は、三菱重工業による委託を機に手掛けるようになった。三菱重工業は、太陽光パネル事業に参入する際、パネルの試験用に、架台一体型の基礎の開発・生産を不二高圧コンクリートに委託した。それを受け2002年に製造を開始した。

 その後、産業技術総合研究所が、国内外メーカーの太陽光パネルを比較評価する目的で導入した、九州センター(佐賀県鳥栖市)の太陽光発電設備に、不二高圧コンクリートの架台一体型の基礎を採用し、2009年に設置した。この出力430kW分の架台一体型の基礎が、「ソーラーキーパー」の元になった。

研究会の会員企業間で協力、納期を満たす

 2012年7月から、再生可能エネルギー電力の固定価格買取制度(FIT)が施工されることが決まり、太陽光発電市場の拡大が見込まれた。

 不二高圧コンクリートは、これまでの経験を生かし、架台一体型のコンクリート基礎や工法を製品化して「ソーラーキーパー」と名付けた。工法も含めて関連特許を取得し、拡販に乗り出した。

 同社の動きを知った旧知のコンクリート関連企業から、「自社でも手掛けさせて欲しい」との要望を受け、「交渉や検討の結果、研究会を立ち上げ、会員企業も製造して、一緒に拡販していく仕組みを構築した」(岸川健太郎社長)。

 「ソーラーキーパー」は、架台一体型の基礎一つの重さが1t以上となる。搬送コストが高額となるため、遠距離の輸送は現実的でない。また、通信関連工事向けなど、他の主要製品の受注状況との兼ね合いから、太陽光発電事業者の要望する納期を満たせない場合もある。

 そこで、一定の技術力、品質などを満たすコンクリート関連企業を、「ソーラーキーパー研究会」の会員として募り、納入先までの距離や納期などで制約のある案件については、会員企業間で協力して納入できる体制を整えた(図4)。

図4●技術力に定評のある会員企業で幅広い地域に納入
ソーラーキーパー研究会の会員企業の一覧。正会員31社で各地をカバー(出所:ソーラーキーパー研究会、不二高圧コンクリート)
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 品質の維持や受注の増加を目的に、技術や営業に関する情報を積極的に共有している。2011年9月に立ち上げ、2015年4月末時点で、正会員が31社、賛助会員が16社、特別会員が1社となっている。賛助会員や特別会員は、型枠や関連部材を担う企業である。

「着工遅れ」への対応にも有効

 例えば、出力1MWのメガソーラーで「ソーラーキーパー」を採用した場合、設置する架台一体型の基礎は750~1000基以上になる(図5)。

図5●大量の受注時には、他の会員企業と分担して納入できる
出力1MWあたり、750~1000基以上が必要になる。写真は、熊本市南区城南町の出力550kWの太陽光発電所。不二高圧コンクリートが納入(出所:日経BP)
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 この引き合いに対して、受注する企業だけでは生産が追い付かず、納期に間に合わない恐れがある場合、納入先に近い会員企業と分担し、必要な量を収めることになる。

 不二高圧コンクリートの下田洋次取締役によると、この協力体制は、メガソーラーの着工が遅れる案件で、とくに有効に機能するという。

 経済産業省による設備認定、電力会社による接続承諾を得ていても、資金調達に苦労し、着工が予定より遅れる場合も多い。

 こうした案件では、連系予定日は遅らせない場合が多く、工期が短縮される。「ソーラーキーパー」の製造開始の時期も後ろ倒しとなる。会員企業間で分担していれば、こうした短納期にも対応しやすい。

 また、リピート受注によって、遠隔地に2件目以降を納入することになった場合、その発電所に近い地元の会員企業を紹介したり、OEM(相手先ブランドによる製造)や納入まで依頼できる。

 例えば、不二高圧コンクリートが受注した、北九州市の新門司にある出力4MWの案件では、同社のほか、会員企業の大建コンクリート(大分県杵築市)とカワノ工業(山口県柳井市)の3社で納入した。山口県厚狭にある出力5.3MWの案件は、地元のカワノ工業が納入した。

標準化で設計の手間、製造コストを低減

 架台一体型の基礎については、製造する会員企業が異なっても、同じような品質を維持しつつ、コストを低減できるよう工夫している。標準的な仕様や、その製造に必要な型枠の図面を用意することで実現している。

 発電事業者が選ぶ、太陽光パネルやアレイ(パネルを並べる単位)の構成によって、使用する架台一体型の基礎の寸法などが変わる。これに対して、パネルメーカーごとにいくつかのパターンを用意し、極力、カスタム設計の度合いを下げている(図6)。

図6●標準的な仕様や型枠の図面を使ってコスト低減
太陽光パネルの寸法やアレイの構成によって、寸法などを微調整したパターンを用意(出所:ソーラーキーパー研究会、不二高圧コンクリート)
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 例えば、東西の幅は2mを基本とし、南北の奥行きが1.5m、2.0m、2.5mといった種類を用意している。

 また、太陽光パネルを設置するためのレールの組み付け方に応じて、三つの基本形を用意している(図7)。

図7●パネル設置用のレールの組み付け方は3種類
後付け、直付け、埋め込みに対応(出所:ソーラーキーパー研究会、不二高圧コンクリート)
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 後から金具でレールを付ける「後付けレールタイプ」、金具を使わずにレールを固定する「直付けタイプ」、コンクリートに設けたくぼみにレールを埋める「埋め込みレールタイプ」である。

 いずれのタイプも、太陽光パネルの寸法や設置角の違いに容易に対応できる。会員企業ごとに、メインに使うタイプは異なり、考え方の違いが表れる部分という。不二高圧コンクリートの場合、直付けタイプを中心に提案している(図8)。

図8●金具を使わずにレールを取り付ける「直付け」
写真は、熊本県山鹿市の出力1.136MWのメガソーラー。設置するシャープ製パネルに合わせた寸法を選択し、不二高圧コンクリートが納入(出所:日経BP)
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 直付けタイプは、金具を使わずにレールを固定するので、部材コストを減らせる利点がある。一方で、パネルの寸法やアレイの構成によって、コンクリート二次製品の横幅やレールの固定位置に設けるくぼみの位置を変える必要がある場合には、後付けレールタイプなどの方が調整しやすい。

三豊市の10MWにも納入、拡大の契機は都城の2MW

 納入済みの案件の中で、最大規模のメガソーラーは、香川県三豊市の出力10MWの案件となっている。研究会の会員企業であるカンケン(香川県観音寺市)が納入した。一方で、数百kWクラスの中小規模での採用も多い(図9)。

図9●数百kWのミドルソーラーでの採用も多い
写真は、熊本県和水町の出力500kWの太陽光発電所。牛舎の隣にある。不二高圧コンクリートが納入(出所:日経BP)
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 「ソーラーキーパー」の普及が本格的に広がるきっかけとなったのは、宮崎県都城市の案件(2MW)や、熊本空港の滑走路脇に設置したメガソーラー(1.99MW)への納入だった。初のメガクラスでの採用となったとともに、JR九州の所有地への設置や、熊本県が主導したことなど、影響力の大きい案件だった。

 都城市のメガソーラーは、地盤に手を加えられない制約があった。また、上に送電網が敷設されており、大型のクレーン車などが使えないなかで、極力、短工期化したいという要望に、コンクリート二次製品を置くだけでパネルを設置できる「ソーラーキーパー」の特徴が合致した。

 会員企業全社による採用の実績は、年を追うごとに上がってきた。2011年9月~2013年3月の1年半期は合計出力約17MW、1万2814基だった。2013年度は同約73MW、5万9380基に急増し、2014年度には同約86MW、6万965基まで増えた。累計では同約177MW、13万3159基に達する。

 このうち、不二高圧コンクリートの実績は、2011年9月~2013年3月の1年半期が同約3MW、2967基、2013年度が同約18MW、1万7214基、2014年度が同約13MW、1万1820基で、累計で約34MW、3万2001基となっている。

 2014年度の他の会員企業の実績では、小倉セメント製品工業(北九州市)が同約17MW、1万2743基、カンケンが同約18MW、1万40基、日本コンクリート(名古屋市)が同約6MW、2882基、ケイコン(京都市伏見区)が同約6MW、2919基などとなり、上位を占めている。

 地域別でみると、九州・沖縄が多く、累計で合計出力約80MW、6万4594基となっている。次いで、四国が同約32MW、1万8087基、中国が同約16MW、1万6105基、近畿が同約24MW、1万5537基などとなっている。

傾斜地などに課題、重機なしで設置できる手法も開発

 「ソーラーキーパー」を使いにくい場所もある。傾斜地、軟弱地盤地、多雪地などである。

 底面が平坦なコンクリート二次製品で支えることから、設置場所は平坦なことが望ましい。概ね6%以下の勾配まで平坦化されていることが、設置の条件となる。

 地盤が軟弱な場所でも、導入が難しい。地盤が沈下する恐れがあり、パネルの設置品質を保証しにくいためである。

 多雪地帯では、導入コストが高くなるために難しいという。積雪時に太陽光パネルに雪が被らないように、パネルの設置高を高くした上、積もった雪が落ちやすいように、設置角を30度以上に傾ける必要がある。多雪地帯に対応した設計で、架台一体型の基礎を作成すると、製造コスト、輸送コスト、施工コストがそれぞれ高くなり、費用対効果が合わないという。

 このほか、1基で1t以上になるために、大型車が通行できない場所への輸送にも制約がある。トレーラーで運搬し、クレーンを使って設置するためである(図10~12)。

図10●トレーラーで運び(左)、クレーンで所定の位置に降ろす(右)
傾斜地で整地できない場合、採用が難しい。大型車が通行できない場所では、2t車に積み替えて運び込んだことも(出所:ソーラーキーパー研究会、不二高圧コンクリート)
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図11●レールを取り付け(左)、接続箱を設置(右)
架台の組み立てや手間のかかる調整が不要で、一体で設置できるのが最大の利点(出所:ソーラーキーパー研究会、不二高圧コンクリート)
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図12●太陽光パネルを固定し(左)、設置を完了(右)
コンクリートのシンプルな構造により、配線の作業が容易に(出所:左はソーラーキーパー研究会、不二高圧コンクリート、右は日経BP)
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 トレーラーが通れる道路がない場所への設置で、途中の道路から、2t車に積み替えて往復した例もある。

 大型車が通行できない場所への対応として、「ソーラーキーパーLight」と呼ぶ小型タイプの提案を始めた。重さは約40kgと、二人で運べるので、重機による作業は不要になる。すでに、パネルの増設用に活用された例もある(図13)。

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図13●大型車が入れない場所に設置可能なタイプも製品化
二人で運ぶことができ(左)、太陽光パネルを4点で固定(右)(出所:ソーラーキーパー研究会、不二高圧コンクリート)