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国立大阪医療センター、救急治療を数秒間隔で記録できるER経過記録システムを開発(page 2)

2015/03/16 00:00
増田 克善=日経デジタルヘルス協力ライター

迅速・正確な記録を実現、治療の評価・検証にも寄与

 岡垣氏が設計したプロトタイプは、院外心停止で搬送された患者に対して、心肺蘇生の際の気管内挿管、血管確保、薬剤投与など基本的な処置内容をリスト化し、選択入力すると実施時間とともに経時記録されるもの。また、実施した処置で派生する医事情報や薬剤オーダー情報をそれぞれのシステムに転送する仕組みを後に設計した。「アイデアとプロトタイプは提供したものの、選択項目だけでERの記録内容をカバーできるのか、多くの処置の速やかな実施が求められる環境で、素早く項目を選択入力できるのか――誰も試みたことがないし、実用化できるか全く不明でした」(岡垣氏)と振り返る。

 このプロトタイプをベースとして、上尾氏をはじめとする救急看護スタッフが、まず心肺停止(CPA)患者を対象とした主な処置を洗い出し、迅速に入力できるテンプレート化を試みた。その後、医事情報や薬剤オーダー情報を抽出・転送する手順をトライ・アンド・エラーで作り込んでいった。

 その結果、CPAのER経過記録システムは2013年11月頃から試験運用を始め、2014年1月から本格運用を開始した。「CPAの処置はほぼ決まった内容を繰り返し行うため、入力操作に慣れることを目標に、先行運用を始めました。数か月間運用してみて、現場運用に耐えられ有用性があると全スタッフの評価を得たことから、CPA以外の三次救急用記録項目のテンプレート開発に着手し、同年7月頃からは、すべてのER経過記録用として運用しています」(上尾氏)と経緯を説明する。

 ER経過記録ツールの画面左側には、来院所見(来院時のバイタルサイン)、CPA(CPA患者用入力テンプレート)、3次(CPA以外の3次救急患者入力用テンプレート)の他、処置(医事情報が発生する処置項目のリスト)、薬剤(救急外来に配置されている薬剤のリスト)が用意されている。右側は処置内容を経時記載するフィールドとなっている。搬送された救急患者が初療室に入ると、まず、救急医の診察やバイタルサインの測定結果をもとに記録担当看護師が来院所見フィールドにバイタルサイン、外傷所見などを入力する。具体的には、意識レベル(Glasgow Coma Scale)、収縮期・拡張期血圧、脈拍、体温、呼吸数、瞳孔径、対光反射などを入力する。

画面左の各フィールドに経過や処置、投与薬剤などを入力すると、画面右に経時記載される。「記載・オーダ」や「記載・薬剤」タブを開くと全経時記録から処置行為、投与薬剤がリスト化される(経時記録の右側)。
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 経過記録の入力は、基本的にCPAあるいは3次の入力用テンプレートを用いて行う。テンプレートの中身は経時的なバイタルサイン入力ツールの他、心肺蘇生や外傷初期診療のA(気道)、B(呼吸)、C(循環)の各項目別に、重要な観察項目や記録項目、実施頻度の高い処置項目を迅速に記録するための簡便な入力ツールを作成している。また、主な投与薬剤、投与経路・流量、創傷処置などのフィールドも設けられ、詳細でスピーディーな入力を支援する。記録担当看護師が処置と並行してテンプレートの各フィールドに情報を入力し、確定ボタンを押すと、画面右の経時記載フィールドに時刻(確定ボタンクリック時刻)と処置内容や経過が次々とリスト化される。数秒間隔の入力にも対応でき、詳細で正確な経過記録を作成できる。フィールド内に掲示された頻用される薬剤や処置以外のものは、処置、薬剤のテンプレートのリストから容易に検索して入力することができる。

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CPAや三次救急用テンプレートで入力できない処置や薬剤は、それぞれの登録リスト(画面左側)から選択して入力する。
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 容易かつ迅速な経時記載を可能にした入力インターフェースを開発し得たのは、救急現場に携わっているスタッフの知見をツールに実装できたからだ。「完成度を高められたのは、救急現場の医師や看護師が設計・開発を手掛け、運用しながらチューンナップを繰り返したからで、ユーザーメードならではの使いやすさを備えた医療ITツールと言えます」(岡垣氏)。全診療科でFileMakerによる電子カルテインターフェースを構築してきた大阪医療センターだが、その中でも診療業務で発生する情報を過不足なく記録できるという点で、最も優れた診療支援ツールだと岡垣氏は強調した。

医師は救急処置終了後に「総合救急部診療録」というFileMaker版のカルテを開き、処置中に看護師が入力したER経過記録(画面右側)を参照しながらカルテ記載を行う。
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 経過記録を完全に電子化できたことで、バイタルサインなどはコピーボタンを押すだけでER外来用電子カルテに自動転記でき、カルテ側からも経過記録を参照できるようになった。「漏れなく正確な処置や病態変化を記録できるようになったことに加え、カンファレンスの際に治療の評価・検証がしやすくなった」と、上尾氏はER経過記録システムの有用性を指摘する。

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