売電だけじゃない! 新・メガソーラー活用術

ガス発電機を併設した島田市のメガソーラー

<第11回>LPGタンク備え、災害時に10日間、電力を供給

2015/02/04 00:00
金子 憲治=日経BPクリーンテック研究所

 2009年に静岡県島田市に開港した「富士山静岡空港」。2014年秋、まだ初々しい飛行場に隣接して、新たな名所が加わった。滑走路のある高台の麓、空港に向かう道路を挟んで、細長い敷地に6300枚の太陽光パネルが並べられた(図1)。2014年11月20日に竣工した、出力約1.5MWの「TOKAI 富士山静岡空港太陽光発電所」だ(図2)。

図1●「富士山静岡空港」に隣接した「TOKAI 富士山静岡空港太陽光発電所」(出所:TOKAI)
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図2●防眩仕様の京セラ製太陽光パネル6300枚を並べた(出所:TOKAI)
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 発電事業者は、静岡県など中部や関東地方を基盤にLPG(液化石油ガス)販売などを展開するTOKAI。2013年11月に静岡県が募集した「県有施設等における太陽光発電事業企画提案・静岡空港事業用地(周囲部)」に参加し、優先交渉権者として選定された。事業用地は、もともと空港建設の際、自然に配慮するための緩衝地として位置づけられ、駐車場にも活用できるように平坦に造成されていたが、ほとんど利用されなかった。

 静岡県は、発電事業者を募る際、条件として、地域住民の啓蒙活動の場として利用できること、災害時は太陽光発電を非常電源として活用できることーーの2点を挙げていた。こうした県の要望を受け、TOKAIは、太陽光発電設備のほか、サイト内に2つの特徴的な施設を建設した。1つは、「エネルギー展示サークル」「発電樹」と呼ぶ、見学者のための展示施設(図3)。もう1つは、非常用電源設備や電気自動車(EV)用充電器、非常用コンセントなど、地域の防災拠点としての設備だ(図4)。

図3●サイトの入り口付近にある「エネルギー展示サークル」(奥)と「発電樹」(手前)(出所:日経BP)
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図4●カーポートはサイドに幕を付けると防災テントになる(出所:日経BP)
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2基のEV充電器と非常用コンセント

 県道34号線から静岡空港に向かうと、到着直前に道沿いに並んだ太陽光パネルとともに、大きなキノコのような設備が目に入る。これは「太陽樹」と名付けた日よけで、薄くて曲げられる太陽光発電シートを屋根に設置した(図5)。三菱マテリアル製の薄膜シリコン型太陽電池だ。また、「エネルギー展示サークル」は、「TOKAI 富士山静岡空港太陽光発電所」の設備の概要などを開設したパネルが掲示してある。外側の壁にも、薄膜シリコン型太陽電池を埋め込んだ(図6)。

図5●「太陽樹」の屋根に装着した太陽光発電シート(出所:日経BP)
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図6●「エネルギー展示サークル」の壁には薄膜シリコン太陽電池を埋め込んだ(出所:日経BP)
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 防災施設としての機能を高めるための設備には、自動車2台を停められるカーポートと2基のEV充電器のほか、フェンスで囲まれた発電所内には、LPGを燃料とする非常用ガスエンジン発電機と、LPGを貯めておく災害用バルクがある(図7)。カーポートの屋根は太陽光パネルと一体化されており、災害時に幕を付けるとテントとして使えるようになる。EV充電器は200Vの倍速充電タイプが2基ある。このほか通常の非常用コンセント(100V)もあり、EV充電以外にパソコンや携帯電話の充電など、プラグを差し込んで電気を使える(図8)。

図7●非常用ガスエンジン発電機と、その燃料であるLPGを貯蔵する災害用バルク(出所:日経BP)
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図8●EV用の倍速充電器と非常用コンセント(出所:日経BP)
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防災拠点に10日間、電力を供給

 災害時にこうした非常用コンセントに電気を供給するのが、太陽光パネルと非常用ガスエンジン発電機だ。災害時に電力会社の系統が停電した際、パワーコンディショナー(PCS)を自立運転に切り替え、電気を供給できるようにしたメガソーラーは多いが、非常用のガスエンジン発電機も併設するケースは極めて珍しい。

図9●災害用バルクからガスエンジン発電機にLPGを供給する(出所:日経BP)
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図10●ガス栓からLPGを利用することもできる(出所:日経BP)
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 太陽光発電設備の出力1.5MWのPCSのうち、500kW分に自立型機能を備えたタイプを導入した。また、非常用ガス発電機は12kVAの発電能力を持つ。災害用バルクには300kg(150m3)のLPGを貯めておき、非常用発電機に燃料を供給する。LPG300kgは、一般家庭用のボンベ(50kg)の6本分に相当する(図9)。

 「災害時に系統電力が停電した場合、300kgのLPGがあれば、太陽光とガスエンジン発電機で10日間は防災拠点として必要な電気を供給できる」と、TOKAIグループのザ・トーカイ(静岡市)の竹内康博・住環境エンジニアリング本部設備工事部参事は言う。事前のシミュレーションでは、供給電力の約8割はガス発電機からの供給になるという。LPGは発電燃料のほか、災害時には暖房や調理用にも使えるようにした(図10)。

日が落ちると太陽光からガス発電機に切り替わる

 地域の防災拠点となった場合に備え、発電所内の倉庫に、テントのほか、炊飯器や二重巻きコンロ、ガスストーブなどの燃焼器も備蓄している。災害時に、電気とLPGの両方を使って炊き出しや暖を取ることができる。

図11●PCSの横に設置した非常用配電盤(出所:日経BP)
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図12●解説用ディスプレイ上の回転灯が点灯すると非常用電源が利用できる(出所:日経BP)
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 実際に災害が発生したら、以下のような手順で運用する。最初に、地震などでLPG関連設備に異常がないか、点検マニュアルに沿って確認し、不具合が見つかれば復旧する。次に手動でPSCを自立運転モードに変え、接続をキュービクル(受変電設備)から非常用配電盤に切り替える(図11)。その上で、非常用ガス発電機を稼働させ、PCSに自立運転の起動に必要な電気を供給する。

 PCS起動後は、日中晴れていれば太陽光の発電電力を優先的に活用し、雨天や曇天、夜間に太陽光の発電量が十分でない場合、エンジン発電機が稼働して、コンセントにつながっている負荷(EVやパソコンなど)に追従して電力を供給する。非常用電源が使える状態になると、サイトの入り口付近にある回転灯がオレンジ色に点灯する(図12)。

 非常用ガス発電機の送電線は非常用分電盤につながっており、非常用コンセントに電力を供給する。非常用ガス発電機は、デンヨー製を採用した。同社製の非常用発電機には、系統電力が停電した場合、自動的に起動する機能を備えた製品があり、今回はそのシステムを応用した。太陽光からの電力を系統電力に見立てて優先して利用し、日が落ちるなど太陽光の出力が低下し、一定以下の電圧になった場合、非常用ガス発電機が自動的に稼働し、電源が太陽光からガス発電機に切り替わるようにした。

小学生向けに「見学ノート」作成

 「災害時に太陽光を非常用電源として活用する場合、雨や夜に電力供給をどうするかが課題になる。蓄電池を導入することも検討したが、より長期間、安定的に電力を供給するために非常用発電機を併設することになった」と竹内参事は打ち明ける。LPGの扱いは、TOKAIグループの事業ノウハウを生かせるうえ、比較的、発電所に近い場所にLPG基地があるため、バルクに貯めたLPGがなくなっても補充が容易との読みもあった。

 TOKAIでは、毎月1回、非常用ガス発電機を動かして、不具合がないか確認している。また、年に2回、地域の防災訓練に参加し、実際に太陽光と非常用ガス発電機による電力利用を体験してもらう予定という。

 また、啓発活動としては、2015年4月以降、小学校の新1年生などを招いた見学会の準備を進めている。施設見学の際に配布する「見学ノート」を作成した(図13)。ノートには、太陽電池の仕組みや発電所の特徴などを、小学生でも理解しやすく解説している。

図13●小学生に配布する「見学ノート」と一般用パンフレット(出所:日経BP)
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 見学会の開催に際しては、島田市で自然保護などの活動を展開しているNPO(非営利団体)法人・しろやまゆいの会と協力する。同会の会員に小学生への説明を依頼することなどを計画している。また、同会には、発電所を囲む法面へのシバザクラの植栽も依頼しており、地域に貢献する発電所運営で、幅広く連携していく方針だ(図14)。

図14●NPO法人・しろやまゆいの会に植栽を委託した(出所:日経BP)
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 除草に関しては、2014年12月に試験的にヤギを使った。地元住民の飼育するヤギ3頭を借りサイト内の草地に放した。1週間足らずで、ほぼ食べつくしたという。ヤギは岩場など高所に上る性質があるため、メガソーラーの除草に活用した場合、パネルに上って傷付けるなどの心配があるとされるが、「今回のヤギ除草では、終始、おとなしく草を食べ、パネルに上ることなどはなかった。今後も定期的にヤギ除草を行いたい」と、竹内参事は言う。