本記事は、日経WinPC2011年10月号に掲載した連載「PC技術興亡史」を再掲したものです。社名や肩書などは掲載時のものです。

 今回はDirectX世代でグラフィックスボードがどう変わったか紹介する。

 DirectXの起源は、Windows 3.1時代の1994年10月にMicrosoftがリリースした「WinG」である。WinGは「Windows 3.1環境でMS-DOSのゲームをそのまま動作させる」ためのAPIだ。Microsoftは、WinGを使ってMS-DOS向けのゲーム「DOOM」を移植し、MS-DOS版と遜色なく動くことをデモするなど、WinGの普及を目指した。しかし、WinGに対応したゲームは数えるほどしかなかった。

図1 ゲームプログラムはMS-DOSが提供するサービスなどは利用せず、直接ハードウエアを操作して画面を描画していた。
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 WinG向けのプログラムは、画面の描画に「WinGDC」という仕組みを使う。従来MS-DOS向けのゲームは、高速な描画のため、MS-DOSを介さずに直接グラフィックスボードなどのハードウエアにアクセスしていた(図1)。こういったゲームをWinGが提供するWinGDCにアクセスするように書き換える必要があった(図2)。だが、Microsoftがデモプログラムの移植を「数日で済んだ」としたように、プログラムの書き換えの手間よりも、WinGには色数や音源などの制約が多かったために、対応は進まなかった。

図2 WinGでは一般的なWindowsプログラムが描画に使う仕組み(デバイスコンテキスト、DC)の代わりに、WinGDCという専用の仕組みを通じて描画する。 3D表現
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 デメリットが多い割に、WinGに対応するメリットは「Windows上で動作する」点しかない。それならWindows 3.1の配下でMS-DOSが事実上動く「DOS全画面モード」で十分と、ゲームメーカーが判断したのは、自然な流れといえる。

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