北見市医療福祉情報連携協議会(北海道北見市):医療・介護機関の情報共有・連携ネットワーク運用を開始(page 3)

FileMakerをプラットフォームに低コストで拡張性の高いシステム目指す

2012/10/31 12:00
増田克善=医療ITライター

低コスト導入と利用者要件を容易に反映できる柔軟な拡張性

 北まるnetのシステム的な特徴は、運営主体が中心となってFileMakerをプラットフォームとして開発したシステムであることだ。各地で進められている地域医療連携システムが大手ベンダーのパッケージや、それをベースに作り込まれたシステムである中で、非常にユニークだといえる。

DASCHシステムの掲示板機能は、医療者と介護者とのコミュニケーションツールとして重要な役割を果たしている。
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共有する診療情報は、病名・主症状・合併症・既往歴・治療歴・処方・経過(画面の内容)など。共有する情報は今後も検討しながら増やしていく。
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診療情報だけでなく、支援概要や通院手段、社会保障情報など家庭環境や社会参加情報も共有できる。
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個人情報保護を踏まえながら多機関での情報共有を行うため、事業所ごとに多様な権限設定ができるようになっている。
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 DASCHシステムに関しては、北海道広域医療連携研究会が当初、脳卒中疾患の連携医療を対象として「Databank of Stroke Care in Hokkaido」をFileMakerで開発し、急性期病院と回復期病院の1対1での実証運用を2008年から開始した。その後、各施設からの接続経費の負担軽減を図ると同時に、脳卒中以外にも対応する「DASCH ver2.0 WEB版」を2010年に開発。その後、道内企業のDBPowers(本社北海道美瑛町)がシステム構想を受け継いで、現在の「DASCH Pro」(Web版)を開発した。

松岡高博 氏
北星脳神経・心血管内科病院理事長の松岡高博氏

 患者個人情報と医療情報を分割・分離して格納し、暗号化と共通参照キー(IDタグ)で両者を連結するなど、セキュリティ上の安全性も保たれている。また、アクセスに関してはSSL-VPNを利用し、組織・利用者の2段階認証を行っている。「セキュリティを確保したWebブラウザで利用でき、専用アプリケーションのインストールなしで運用できることは重要。実証実験に参加している25機関以外、今後の本格運用フェーズでは予算上パソコンを貸与することができません。自前で用意してもらわなければならないので、OSや端末に依存しないWebブラウザ上で動作することが条件でした。」(田頭氏)。

 北まるnetの運用において、患者あるいは介護サービス利用者の情報開示に関する同意書は、運営主体である北見市医療福祉情報連携協議会との間で交わされる。多機関・多職者が参加していることから、誰にどの情報を開示するかきめ細かな権限設定が必要になる。DASCHシステムでは、情報保護の点にも十分考慮している。「各機関に対して、管理(親権限、参照権限付与もできる)、追記(データ書込み、自院で入力した情報の編集・削除)、閲覧(参照のみ)、照会(個人の情報、名前・住所などをブラインドにした閲覧許可)などが細かく設定でき、ユーザー権限もページごとに許可・不可を設定できるので、無秩序な情報共有は避けられます」(田頭氏)。

今野敦 氏
北見市医療福祉情報連携協議会代表副会長の今野敦氏

 連携協議会では北まるnetの整備において、道の「地域支え合い体制づくり事業費」(介護基盤緊急整備基金)の助成金を受けて構築している。初年度に介護分野の情報共有を先行してスタートしたために当助成金を受けることができたものだが、助成金額は1850万円と決して多くはない。各地の地域医療連携ネットワークが億単位の資金で構築されているのに対し、北まるnetはネットワーク構築、医療・介護情報連携データベースの構築、介護認定連携システムの構築、データセンター委託の各事業を、約1800万円で実現している。

 北まるnetの実証実験は、病院、診療所、市役所、地域包括支援センター、居宅介護事業所、介護保険施設、調剤薬局、地区消防署など25カ所が参加して始まった。今後、本格運用に向けて市内の医療機関、介護事業所などへの説明会や講習会を開いて参加機関の拡大に努めると同時に、市民向け説明会を開催して周知と理解を求めていく予定だ。北星脳神経・心血管内科病院理事長の松岡高博氏は「参加機関が多くならないと患者・利用者の情報も集まらないし、地域住民への医療・介護サービス向上にもつながりません。参加施設の拡大が成功のカギになります」と意気込みを語る。

 自身でも院内システムをFileMakerで作成している連携協議会代表副会長の今野敦氏(北見循環器クリニック院長)は、北まるnetプラットフォームを高く評価している。「今後お薬手帳や処方せんの電子化をはじめ、さまざまな機能や仕組みを実装していく計画です。永続的に使える社会システム基盤としていくためには、地域の医療・介護サービスを担う現場の要望を取り込める柔軟なプラットフォームであること、かつそれを限られた予算で実現できることが求められます。そういう意味でも、専門的なシステムスキルがなくても扱え、しかも低コストで求める機能を作れるFileMakerは価値あるツールだと思っています」(今野氏)。

 加えて今野氏は、地域の社会基盤として医療福祉情報連携システムが発展していくために、行政がある程度の責任を持った支援が必要だと訴える。「これは、本来医療機関が資金を投じて行う事業ではないと考えています。疾病予防やCKDの早期対策など進めば確実に行政の社会保障費は減るわけですから、行政の責任において支援するべきでしょう。そのために、われわれとしては医療福祉情報連携ネットワークにおけるエビデンスをきちんと出して、有用性を証明していく必要があります」(今野氏)と決意を語った。


■団体概要
名称:北見市医療福祉情報連携協議会
会長:古屋聖兒氏
代表副会長:今野敦氏
協議会参加機関:医療機関、介護関連機関、消防組合、市役所など25団体(2012年7月時点)
導入システム:ファイルメーカー「FileMaker Server」「FileMaker Pro」、DBPowers/北海道広域医療連携研究会「DASCH Pro」

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