QAで読み解く、利益の出るメガソーラー技術講座

<第5回>パワコンの役割や機能は、発電した電力を直流から交流に変える以外にもあるのでしょうか?(下)

電力系統を安全に運用する役割まで担う

2014/01/15 00:00
伊丹 卓夫=東芝三菱電機産業システム(TMEIC)

メガソーラービジネスを安定的に運営し、収益性を高めるには、「発電事業者」である運営者が最低限の電気設備の知識を備え、適切な太陽光発電システムを構築・運用するのが前提になる。国内メガソーラー向けパワーコンディショナー(PCS)の最大手である東芝三菱電機産業システム(TMEIC)の技術者で、当サイトのアドバイザーでもある伊丹卓夫氏が、メガソーラーに新規参入した事業者が抱く、いまさら聞けないメガソーラー技術の基本に答えた。

 前回に続き、パワーコンディショナー(PCS)がメガソーラー(大規模太陽光発電所)で担っている、六つの役割を紹介します。(1)MPPT制御(最大電力点追従制御)、(2)高調波抑制対策(PWM制御)、(3)系統連系制御(電圧形/電流制御)、(4)力率制御(電圧上昇抑制対策)、(5)系統連系保護(OVR、UVR、OFR、UFR、単独運転保護装置:受動/能動)、(6)モニター(入出力電圧、電流、電力、無効電力、力率、系統異常、直流電圧・電流異常)のうち、前回は(1)のMPPT制御と(2)の高調波抑制対策について解説しました。

発電した電力を適切に送電する系統連系制御

 (3)の系統連系制御は、メガソーラーが発電した電力を、適切に系統に送電するための機能です。この系統連系制御も、インバーターにはない、PCSならではの機能と言えます。

 インバーターはあくまで電力変換装置です。これに対して、PCSが担っている系統連系制御は、系統の電圧を検知して、発電した電力を適切に系統に送り込むための制御です。

 PCSによる系統連系制御では、図1に示したように、系統の電圧を基準として、これより少し高い電圧を発生させたり、電圧の位相をシフトすることによって生じる電圧差を使って、発電した電力を系統に流し込みます。

図1●PCSの出力による系統連系制御の原理
系統の電圧より少し高い電圧を発生させたり、電圧の位相をシフトすることによって生じる電圧差を使って発電した電力を系統に流し込む(出所:著者)
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 また、発電時の系統の電圧を安定させるために、電流を流し込むだけでなく、系統の電圧に対し、流し込む電流の位相を変える制御をPCSが担っています。

 この時、系統の電圧と流し込む電流のゼロクロス(位相)が同じ場合を、力率1と規定しています。力率とは、交流電力のうち実際に利用可能な電力の比率のことです。交流電力は、売電可能な有効電力と、売電できない無効電力で構成されます。このうち有効電力が100%占めている交流電力を力率1、無効電力が100%を占めている交流電力を力率0と規定しています。

 この前提を基に、(4)の力率制御を紹介します。力率制御とは、(3)の系統連系制御によって、メガソーラーで発電した電力(電流)を、系統の電圧よりも位相を進ませることによって、無効電力を注入して系統の電圧上昇を抑制する制御を指します。

無効電力を注入し系統の電圧上昇を抑制

 ここで、なぜ発電時に系統の電圧が上昇するのかを、図2の電圧上昇の発生メカニズムを使い、高圧系統に連系したメガソーラーを例に説明します。PCSは、前述した通り、電力会社の配電用変電所の系統電圧に対して、少し高い電圧を発生して電力を流し込みます。

図2●発電時に系統の電圧が上昇するメカニズム
送電線が長くなるほど、インピーダンス分による電圧が大きくなり、電圧上昇分が増える(出所:著者)
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 この「少し高い電圧」とは、送電線の抵抗(r)とリアクタンス(x)によって決まるインピーダンス分による電圧(Δv)を、PCSの本来の出力電圧に加えたものです。送電線が長くなるほど、このインピーダンス分による電圧が大きくなり、電圧上昇分が増えることになります。

 系統の電圧の上昇幅は、電気事業法で規定されています。低圧需要家の単相式の場合は101Vに対して±6V(±6%)、メガソーラーのような三相3線式の場合は202Vに対して±20V(±10%)となります。

 ところが、メガソーラーと低圧需要家が同じ送電線に繋がっていることによって、実際にメガソーラーに許容される電圧の変動幅は、低圧需要家の単相式に合わせることになり、電圧の上昇幅が三相3線式より狭まることによって、電圧上昇抑制対策が必要なケースが増えることになります。

 力率制御は、発電した電力(電流)を系統に送り込む際に、系統の電圧よりも位相を少し進めることによって系統のインピーダンス分を相殺する無効電力量を送り込むことで、こうした電圧の上昇分を抑制する対策です。具体的には、連系する電力会社から提示された最大0.85の力率で無効電力を制御します。

無効電力分だけ太陽光パネルからの有効電力を制限

 無効電力は、太陽光パネルから取り込んだ有効電力から作り出すのではなく、系統側から取り込むために、直接、発電には影響を与えません。しかし、PCSにとっては、太陽光パネルから取り込む有効電力と、系統から取り込む無効電力の両方を負担することになります。この無効電力を取り込む分だけ、太陽光パネルから取り込む有効電力を制限する必要がでてきます。このため、太陽光パネルによる発電が、その制限値より多い状況にある場合、その分の売電量が減ることになります。

 無効電力を取り込んで系統の電圧上昇を抑制する方法は、二つあります。一つは、系統の電圧が指定された電圧以上になると、指定された電圧以下になるまで力率制御の上限である0.85まで、連続的に無効電力を注入して電圧を抑制する方法です。もう一つは、有効電力と無効電力の比率を、常に一定とする力率一定制御です。

 メガソーラーの場合、系統に及ぼす影響が大きいことや、複数台のPCSを設置することが多いことから、PCS間の電圧干渉が生じにくい力率一定制御を採用するのが一般的です。この力率一定制御の原理を、図3に示します。

図3●力率一定制御による系統の電圧上昇抑制の仕組み
力率0.85という条件を電力会社から受けたとすると、出力500kW機のPCSの場合、有効電力の出力を最大425kWに抑えなければならない。太陽光パネルからPCSに入力される電力が425kW以下ならば、そのまま全量を売電できる(出所:著者)
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 例えば、力率一定制御の場合で、連系規定で定められた上限の力率である0.85という連系条件を電力会社から受けたとすると、出力500kW機のPCSの場合、有効電力の出力を500kW×0.85で最大425kWに抑えなければなりません。

 その時の日射などの状況によって、太陽光パネルで発電し、PCSに入力される電力が425kW以下ならば、そのまま全量を売電することができます。425kWを超えていた場合、その分は制限されるために発電損失となりますが、太陽光パネルの容量が500kWならば、有効電力の出力を425kWに制限されたPCSとの関係を過積載比率で表すと、1.18対1となるものの、太陽光パネルからPCSの出力に至るまでの中間損失が、通常は20%程度あるために、発電量には大きな影響を与えないことになります。こうした力率制御は、多くのメガソーラーにおいて、電力会社から連系条件として指定されているのが現状です。

瞬低や停電時でもPCSの運転を維持

 (5)の系統連系保護については、過電圧継電器(OVR)、不足電圧継電器(UVR)、過周波数継電器(OFR)、不足周波数継電器(UFR)、単独運転保護装置(受動、能動それぞれ1点ずつ)などによって実現します。ここでは、単独運転保護の一環として、2014年4月から運用が開始されるFRT(fault ride through)を紹介します。

 FRTとは、図4の交流系統事故時の電圧の動きに示した通り、電力系統における事故などによって、瞬低(瞬間的な大幅な電圧の低下)や停電が発生した時でもPCSの運転を維持させる機能です。落雷などによって電力系統の回線が切り替わることで電圧が瞬間的に低下したり、周波数に異常が生じた際などに、PCSがこれらの擾乱を検知して一斉に自動停止する可能性があります。この現象が生じると、電力系統の需給バランスが崩れて、広い範囲で停電する可能性があるのです。

図4●交流系統の事故時の電圧の動き
電力系統に瞬低や停電が発生した時でもPCSの運転を維持させる(出所:著者)
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 そこで、PCSが交流系統の電圧波形をモニターし、系統電圧が一定量まで低下しても、事故時の運転を一定時間維持するのが、FRTやLVRT(low voltage ride through)といった機能です。

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