市場でスモールセルへの期待が集まるにつれて、標準化の議論も本格化してきた。舞台は、3GPPである。3GPPは現在、LTE-Advancedの後継仕様である「Release12」(2014年6月には策定終了予定)、さらにその先の「ポストLTE-Advanced」の構想も含め、各社が想定する2020年に向けた技術課題や、要素技術の候補などを共有化している。

 この中で、スモールセルを大量に設置し、積極的に活用しようという議論が盛り上がりを見せている。例えば、NTTドコモは「Phantom Cell Architecture」と名付けたスモールセルの活用シナリオを提案している。この他、スウェーデンEricsson社の「Soft Cell」や韓国SK Telecom社の「Super Cell」といった具合に、3GPPに参加する各社から同様のコンセプトが打ち出されている。

 現在、「こうした提案内容を受けてどのように仕様化していくかを擦り合わせている段階」(NTTドコモ)だ。

三つの技術的な挑戦

 プラグ・アンド・プレイで基地局をどんどん増設していく。そんなスモールセルを実現するためには、次の課題を解決しなくてはならない(図3)。すなわち、(1)小型化/低消費電力化と(2)バックホールの確保、(3)管理性の向上、である。

図3 2020年を目指した開発が加速
スモールセルが街じゅうに設置される社会を想定し、各社は技術的な挑戦を始めた。多数のスモールセルを配置するために、小型化や低消費電力化、バックホールの確保、管理性の向上などに力を注ぐ。
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 1点目の小型化/低消費電力化は、どんなところにも設置できるようにするためには欠かせない要素である。場所を選ばず、電源があるところならどこでも取り付けられるようにするには「小さいほど、消費電力は低いほどいい」(NEC)。基地局機能のワンチップ化や微細化、移動端末向け技術の積極的な活用が必要となる。

 2点目のバックホールの確保は、「スモールセルをばら撒く上で最大のボトルネックになる」(富士通)。バックホールはスモールセルをパケット・コアにつなぐ部分である注3)。もちろん、光ファイバやDSL、PLC、Ethernetなどが利用できる場所ではこれを活用すればよい(図4)。

図4 バックホールの確保がネックに
スモールセルをパケット・コアにつなぐバックホールは、設置条件やそこで手に入る通信回線に応じて選択する必要がある(a)。アンテナ素子数を50~100に増やし、伝送容量を高める「MassiveMIMO」を利用する考えもある(b)。
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 しかし、どこにでも設置できるようにするには無線化が有効だ。「50~100ものアンテナ・アレイを活用する『Massive MIMO』が利用される時代には、端末との通信だけでなくバックホールに使うことも考えられる」(ノキアシーメンスネットワークス)。

 3点目の管理性の向上は、特にスモールセルの“プラグ・アンド・プレイ化”を実現する際の重要な要素になる。基地局の自動設定や、移動通信網のセンター設備との連携などを機能としてスモールセルに盛り込む必要がある注4)

注3)基地局装置のうちベースバンド処理部と無線部分を独立させ、この間を光ファイバでつなぐRRH(remote radio head)というシステムもある。
注4)管理性の向上に関しては、通信事業者のネットワーク運用の自動化を目指したSON(self-organizing network)や、スモールセルとマクロセルの電波干渉を軽減する、「eICIC:enhanced inter-cell interference coordination」の拡張技術がカギを握るとみられている。