前回は、災害発生時に事業を継続するための取り組み(事業継続マネジメント、BCM)の基本的な考え方を示すとともに、東日本大震災で被災した企業の状況から得られた新たな教訓を6つの視点に整理した。そして、6つの視点のうち「災害時の業務の見える化と緊急時対応計画の整備」について解説した。今回は、さらに「ビジネスインパクト分析と重要業務の絞り込み」「被害想定と致命的損害から免れるための事前対策」「柔軟性の高い事業継続戦略」「演習・訓練の実施」の4つについて説明する。なお、もう一つの視点「SCRMの構築」については、連載の3回目で取り上げる。(Tech-On!)

[2]ビジネスインパクト分析と重要業務の絞り込み

 BCPの実効性を高めるには、想定したインシデントによる影響を防ぐための効果的な対策を、インシデント発生前に講じておく必要がある。それには相応の投資が不可欠だ。ただし、対策を講じたことで生産性が低下するなど経営に支障が出てはならない。従って、「ビジネスインパクト分析」を実施し、費用対効果に配慮しつつ重要業務の絞り込みと復旧の優先順位付けを合理的に行う。これにより、本当に必要な対策だけを選ぶことが可能になる3~5)

参考文献
3)青地忠浩,「半導体産業向け事業継続(BCM)の10ポイント」,『SEAJ Journal』,2006年9月号,pp.47-53.
4)青地忠浩,「製造業において今、求められる事業継続マネジメント(BCM)とは」,『クオリティマネジメント』,2007年7月号,pp.74-79.
5)青地忠浩,「事業継続マネジメント(BCM)の構築・運用と人事部門の役割」,『労政時報』,2009年3月13日号,pp.32-49.

 ビジネスインパクト分析は、①重要業務は何か、②重要業務に欠かせない経営資源は何か、③インシデント発生時にどの程度の時間までなら重要業務が中断するのを許容できるか、などを明らかにするプロセスである。製造業では、重要業務を選定する際の指標として、収益性、市場シェア、成長性、ブランド、顧客への供給責任、公共性などがある。

 工場の重要業務は、生産活動に不可欠な3M(Man、Machine、Material)のいずれか、または全てが不足したり使用できなかったりするような厳しい条件下において、優先的に生産・供給を再開する製品の生産と、そのために必要な工場機能のことを指す。ただし、その重み付けは業種や事業形態などによって異なる。

 例えば受注生産の場合、製品種別で復旧の優先順位を付けるのは難しい。そのため、顧客の業種や契約内容などによって優先的に復旧する製品や機能を決めることが多い。事前に優先順位を付けるのではなくインシデントが発生した時点で決めるということにしておき、判断基準だけをBCPに記載する例もある。さらに、設備メーカーなどでは、製品の生産ではなく、顧客への保守パーツ/消耗品の供給やアフターサービスを重要業務と位置付けることが少なくない。

 工場の生産活動を支える受注/設計/調達/製造/在庫管理・出荷といった機能については、実際の業務レベルにまでブレークダウンし、それぞれの業務で許容される中断時間および復旧/再開の優先順位を検討する。

[3]被害想定と致命的損害から免れるための事前対策

 今回の震災において、海岸近くに工場がある宮城県のリサイクル事業者は、震災直後に従業員約40人を避難させ、内陸側の民家に本社機能を移し、廃油回収業務を震災の約1週間後に再開できたという6、7)

参考文献
6)「早期復旧、BCPが奏功、宮城の被災企業」,『河北新報』,2011年4月3日付朝刊.
7)「想定外をBCPで乗り切った企業」『リスク対策.com』,http://www.risktaisaku.com/Home/jishin-bcp/article184/

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