前回から続く)

 第1の魅力である超精密とは、中国の金型を超える極めて高い精度の金型を製作し、難易度の高い形状のワークを品質良く造り込むことだ。これにより、中国企業では造ることが難しい付加価値の高い部品を成形できる金型を日本の顧客に提供する(次ページの別掲記事参照)。

 例えば、キヤノンモールド(本社茨城県笠間市)は、デジタル一眼レフカメラのオートフォーカス(AF)部に使用する2次結像レンズを、樹脂で成形するための金型部品を製作した(図3*3。同レンズは、撮影レンズからミラーを介して反射光としてAF光学系に取り込んだ光束を、AFセンサ(AF用撮像素子)上に再結像させるもの。精度がピントのズレ(デフォーカス量)に影響するため、デジタル一眼レフカメラの性能を左右する重要部品の1つだ。

*3 キヤノンモールドでは2次結像レンズを「メガネレンズ」と呼ぶ。

 2次結像レンズは、長方形の小さな樹脂板に半径1.5mm、幅1.3mmの球面が複数連なった構造(図3、4)。中央部に4つの球面、その左右に2つずつの球面が部分的に重なってレンズを構成している。これを射出成形で造るために、同社はこの金型部品を形状精度が0.6μm、位置精度は0.2μmと超高精度に仕上げた。

図3●2次結像レンズの金型部品(キヤノンモールド)
同レンズは、デジタル一眼レフカメラのAF部に使用する高付加価値部品で、超高精度な加工を施した金型を製作する必要がある(a)。(b)は拡大した金型の写真。
図4●成形した2次結像レンズ
熱可塑性高機能樹脂を射出成形して加工した。先端に付いた4個の部品が2次結像レンズ(a)。(b)は拡大した同レンズの写真。

 キヤノンモールドが持つ金型加工技術を基に、キヤノンが内製した工作機械と計測装置を組み合わせて実現した。「内製の機械がなければ、ここまで高精度にはできなかった」(キヤノンモールドの説明員)。採用した樹脂は、日本ゼオンの熱可塑性高機能樹脂であるシクロ・オレフィン・ポリマ(COP)「ゼオネックス」だという。

0.1mm角×4800個の貫通穴

 精密加工技術を駆使した自社製金型による成形品サンプルとして、携帯電話機向けのストラップを開発したのが、三~ファインツール(本社愛知県高浜市)だ。球体にプレートが付いた構造で、球体の部分には小さな穴が多く開いたメッシュボールとなっている。プレートには、樹脂発色によって文字を書いた(図5)。

図5●携帯電話機向けのストラップ(三?ファインツール)
精密加工技術によって作製した金型で成形した樹脂部品のサンプル(a)。球体の部分をメッシュボールとした(b)。球面には、0.1mm角の小さな貫通穴が4800個開いている。

 球体に採用した樹脂はポリアセタール(POM)。球面に0.1mm角の小さな貫通穴を合計4800個開けた。中には蓄光ボールが入っており、しばらく光に当てて暗い所に持っていくと、小さな貫通穴を通して、光る様子が見える。この貫通穴の一つひとつをきちんと成形するには、金型を公差±3μmの精度で加工する技術が必要になるという。「これだけ多くの穴をすべて正確に成形できる金型を造れる中国メーカーは、まずないだろう」と同社会長の神谷昭司氏は言う。

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