インサイト
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実はコストが掛かっていることを、ランプの薄さが証明する

 ハイブリッド車が売れている。日本国内の自動車販売台数を見ると2009年4月はホンダの「インサイト」が1位、5月はトヨタ自動車の新型「プリウス」が1位、インサイトが3位。両車とも受注残を抱えた状態だから需要を反映したものではなく、生産能力に制約された数字だ。逆に“ハイブリッド車だけが売れている”ことが問題になるほどの勢いがある。

 きっかけは「インサイト」「プリウス」が相次いで登場し、そろって低価格を打ち出したこと。環境を配慮する余裕のある人のためのクルマだったハイブリッド車が、車両購入費とガソリン代をてんびんにかける普通の人のクルマになり、市場を広げた。

 流れを作ったのは、先行したインサイト。189万円からという価格設定の衝撃は大きく、プリウスの価格設定に影響を与えたという説もある。

 価格を下げられたのは、燃費とのバランスを取ったため。究極の燃費を追求すると価格が上がる。無理のないところで止めておくことが基本方針である。

 プリウスがモータを50kW から60kWに強化して“電動率”を高めたのに対し、前モデルの「シビック・ハイブリッド」で15kWと小さかったモータをさらに小さく、10kWにした。あくまでもエンジン主体のハイブリッド車としてコストを低減したのだ。 昇圧回路は使わない。水冷のインバータは使わない。電動の水ポンプも使わない。冷房用の圧縮機に至っては、シビック・ハイブリッドでエンジン、モータのどちらからでも駆動できるものを採用していたのをやめ、普通の圧縮機に戻した。

優遇税制狙いなどとんでもない

後部から見る
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電池、インバータなどを黒い小さな箱に収めた。

 あまりにも市場に受け入れられたため、「エコカー優遇税制にぴったり合わせた」と分析されがちだが、そうではない。もともと、インサイトは究極のプロダクトアウト商品だった。ユーザーの反応が良かろうと悪かろうと、メーカーとしてユーザーを引っ張っていこうという覚悟で開発した。

 インサイトの社内向けコンセプトは「Next ERATransportation 」。100年のスケール、あるいは「ERA」、つまり時代のスケールで考えて開発した。ホンダは100年先には化石燃料はなくなると分析しているから、最終的な主役は電気自動車や燃料電池車。ハイブリッド車にはそこまでをつなぐ役割を持たせることになる。

 それでも考えているのは長い時間スケールであり、当座のユーザーの要求に密着し、ヒットを狙ったものではない。つまりマーケットインのつもりは毛頭ない。まして優遇税制狙いなどということはあり得ない。

 ところが、開発中に状況が変化してきた。原料価格は上がる、石油価格も上がる、不況の影響で自動車市場は縮小する。そのうちにエコカー優遇税制が出てくる。これらはすべて想定外であった。

 長いスケールで考えていたから、こうした事態に合わせて開発の方向をいちいち修正する気もない。ぶれずにそのまま出した。それが、結果としてマーケットインの商品になった。こうした幸運にも助けられ、インサイトは2009年を代表するヒット商品になった。(浜田 基彦=日経Automotive Technology)

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