国内最大の医療機器開発の集積地、本郷エリア

 このとき、ドライビング フォースの役割を果たす製販企業として視野に入れたのが、東京大学医学部がある本郷キャンパス周辺に立地する医療機器企業群だ。

 本郷エリアは、医療機器の製造・販売等を営む商工業者の国内最大の集積地といえる。日本医療機器協会の会員企業約330社のうち約130社が本郷エリアに立地している。「多品種・少量」製販が、医療機器の特徴の1つだが、本郷エリアの企業群はそれを象徴している。売上規模は10億円~20億円台が中心だが、それぞれの企業は特定の診療科や領域向けの優れた機器を開発し、臨床現場との関係性も保っている。

 医療機器開発一筋に歩んできた、創業年数の長い老舗(しにせ)企業が多く、医療機器の市場動向に詳しく、法規制に対応するノウハウを知財の1つとして社内に蓄積している。

 さらにこれが重要なのだが、自社資源だけでは進められない開発テーマを持っており、ものづくり企業とのマッチングや公的資金の活用に関するサポートニーズがある。

 各企業はそれぞれ得意分野を持っているが、医学の進歩は著しい。臨床現場からは自社製品に対する改良の要望が、常日頃から寄せられる。要望に応えられない状況が続くと、他社製品や海外製品に取って代わられるおそれもある。それゆえに、製品改良や新製品開発に迅速に取り組みたいのだが、自社が調達できる資金力や技術力だけでは十分に対応できない。

 本郷エリアの企業群には、こうした状況にあるところが多い。外部からの開発資金等があれば、取り組みたいテーマ、取り組めるテーマを持っている。また、優れたものづくり企業と提携して製品力を高めたい意欲もある。

 しかし反面、臨床現場の要請に応えるために公的資金を活用したいが、活用するノウハウを身につけていない。優れたものづくり技術を導入したいが、技術を有する企業を知らない。ということは、公的資金の活用やものづくり企業とのマッチングに関するサポートニーズはある、と解釈できる。

 柏野さんは製販ドリブンモデルのメリットを、つぎのように解説する。

「ものづくり企業にとってのメリットは、得意技を生かして、しかも医療機器市場に関する知識や法規制への対応といった苦手な部分は製販企業に分担してもらいながら、医療機器の部品・部材の供給という新しい事業を開拓できることです。無理なく円滑に医療機器産業に参入し、視野を広げることができます。

 一方、製販企業にとってのメリットは、自社の負荷(ふか)が軽減されるかたちで自社の改良品や新製品を獲得できることです。臨床現場の要請に応える製品を生み出すことで、臨床現場との新たなパートナーシップを強化することができます。それによって既存製品の売上拡大にもつながり、ものづくり企業の力を活用して、自社事業を拡大・強化できるわけです」