医工連携「製販ドリブンモデル」開発物語(page 5)

医療機器産業への参入を成功させる

2015/08/21 00:00
福山 健=日医文化総研
出典: 「知遊」第24号,2015年7月発行 ,pp.48-59 (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

新規参入の壁を取り除く「製販ドリブンモデル」

 柏野さんが提唱する「製販ドリブンモデル」という考え方は、「医工の融合・連携」を念頭に置いて、医療機器関連の調査研究・コンサルディング活動のために、日本全国を飛び回る実践のなかから生み出されたものだ。

 全国どこに行っても、キラッと光るものづくり企業が存在している。企業規模では中小に分類されるが、得意分野では大企業も太刀打ちできない優れた技術を持つ。こうした企業は、自社の技術を生かして新たな事業領域に進出したいと考えている。

 また、地方自治体も、ものづくり企業の新事業展開を支援したい意向を持っている。それによって、新たな雇用が生まれ、税収も増加し、地域経済が活性化するからだ。

 新事業の進出先として、医療機器分野は魅力的に映る。その理由として、主に4点ある。

①国内外ともに需要増が見込まれる成長市場であること。

②長年蓄積してきたものづくりの技術が生かされる事業領域であること。

③国が重点成長分野に指定し、各種の支援策が立ち上げられていること。

④日本市場だけではなく海外市場にも進出できる有望性が高いこと。

 しかし一方では、医療行為にかかわる業種なので、いろいろと厳しい規制があり、参入障壁が高いのではないかという不安を抱いている。実際に慣れない医療機器の製造に多額の資金を投じて企業生命が危うくなったという事例も見聞している。

 柏野さんは、新規参入しようとするものづくり企業にとってのハードルは、5点に集約されるという。

 1点目は、臨床現場との関係構築と維持だ。臨床現場の医師から1回話を聞けば医療機器が開発できるというものではなく、医療機器ができるまで、ニーズを聞き続け、現場を見続けなければならない。従来事業を続けながら普段はつきあいのない臨床現場の医療者たちとの関係を構築し、維持し続けるのは簡単ではない。

 2点目は、臨床ニーズの目利(めき)きだ。その臨床ニーズは、特定の医師だけではなく広範な医師が求めているものであるかということも含めて目利きをする必要がある。

 3点目は、市場環境および法規制を踏まえた製品デザインだ。これは研究開発のゴールを設定することにあたるものだが、新規参入する企業にとっては市場も法規制も未知な領域なので、困難を伴う。

 4点目は、医療機器の製造販売承認を取得するためには医薬品医療機器法などの法規制に対応しなければならないが、この分野の知識と経験がないため試行錯誤を繰り返さねばならない。

 5点目は、製品化でき販路を確保したからといってそれで終わりではなく、メンテナンス・修理などサポート体制を構築しなければならない。

 柏野さんが医工連携を進めてきて強く認識したのは、これらのハードルを新規参入企業だけで乗り越えるのは、きわめてむずかしいということだ。医工連携による事業化の成功率を上げるためには、これら困難点を克服できる要素をプラスしなければならない。

 そこで着目したのが、医薬品医療機器法における製造販売業、略称「製販」を業とする企業である。

 製販企業が持つノウハウをもってすれば、これらのハードルを比較的効率的に越えていけるのではないか。これからの医工連携の方向性は、製販企業がイニシアティブをとって事業化を推進する体制をまずつくって、そこにものづくり企業や大学や高専などが参画していくようなかたちにするべきではないだろうか。

 そして、このような形態を、製販企業が強力な駆動力・推進力、すなわちドライビング フォースになっていく姿から「製販企業ドリブン型・医工連携モデル」(図表1)、略称「製販ドリブンモデル」と名づけた。

図表1 製販企業ドリブン型・医工連携モデルの全体像©柏野聡彦
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