ハスの葉の撥水効果やサメ肌の流体抵抗の低減効果、ヤモリの指の粘着力など、生体のもつ優れた機能や形状を模倣し、工学・医療分野等に応用する技術、いわゆるバイオミメティクス(生物模倣技術)が注目されています。これらの技術は、環境調和型の技術として、また、新規材料のデザインから生産プロセスにわたり、ものづくりに革命をもたらすものとして、期待されています。

 特許庁は「平成26年度特許出願技術動向調査」において、バイオミメティクスに関する特許出願動向や研究開発動向を調査し、その実態を明らかにしました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)はこちら)。同調査の主要部分を本稿で紹介します。

 ISO/TC266注1)では、バイオミメティクスは生物の構造や機能を抽出し、それを抽象化し、工業製品に応用したものと定義する方向で議論されています。本調査では、上記の定義をベースにしつつ、生物から何らかの着想を得ていると考えられる技術を広く対象としました(図1)。

注1)バイオミメティクスの国際標準化を議論する委員会

図1 技術俯瞰図
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 バイオミメティクスにおいて、生物の機能や形状の応用先は幾つかの種類に大きく分類できます。本調査では、「分子・材料」「構造体」「機械」「プロセス」を対象にしました。

 「分子・材料」は、親水性・疎水性材料、構造発色材料、接着性・粘着性材料などの各種機能性材料の他、人工酵素などの分子を指します。「構造体」は、カワセミのくちばしを模倣した新幹線やハコフグを模倣した車など、表面構造のようなミクロな構造ではなく、マクロな構造を模倣したものを指します。「機械」は、主に生物を模倣したロボットを指します。「プロセス」は、バイオミネラリゼーション注2)やバイオテンプレート注3)を応用したものづくりなど、生物の物質生産や構造形成を生産プロセスに応用するものを指します。

注2)生物の無機鉱物を作る作用
注3)生物組織や構造を鋳型にして、金属材料等に微細構造を転写し、機能を発現させる技術

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