今回の華麗なる技術者は、NTT東日本関東病院で消化器内科に務める野中康一医師である。

 JR五反田駅周辺には、今でも戦後の歓楽街の面影が残る地域がある。それを抜け、美智子皇后陛下のご生家のあった池田山の方向に坂を上る途中に病院はある。NTT東日本関東病院(以後、NTT病院と書く)は、以前は関東逓信病院と呼ばれ、NTT関係者の病院として生まれたようだが、現在は地域の総合病院としての役割を担っているように思う。我が家が比較的近いところにあることから、私は検査などで日頃からお世話になっている。

左から野中康一氏と加藤幹之氏(写真:加藤 康)
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 野中氏との出会いは、生まれて初めて大腸の内視鏡検査を受けたことだった。担当医師が、たまたま同氏だったのである。

 野中氏は、内視鏡検査を終えると、「ちょっと大きなポリープが見つかりました。今は問題ないのですが、そのままにしておくと悪性になる場合もあるので、改めて日を決めて取りましょう」と、(私にはそう聞こえただけだろうが)やや弾んだ声で説明された。

 1カ月ほど後に、これも生まれて初めて6日間のスケジュールで入院し、ポリープ切除の手術を受けることになった。

 入院といっても、ある程度の安静と手術後の食事のコントロール(2日間は点滴のみで、その後もおかゆ食)のためである。私はタブレット端末に入れた本を6冊と、パソコン3台などなどを持ち込み、ありがたい休暇と決め込んでいた。

 ところが、手術の直前に説明を受けると、あまり気楽にもしていられないことが分かってきた。私のポリープは、平らに腸の壁に薄く張り付いたもので、直径が2cm以上ある。それを腸に穴を開けないように剥ぎ取るのである。

 もし少しでも穴が開いてしまうと、その瞬間、開腹手術に移らなければならない。何通かの同意書に署名が終わるころには、やめておいた方が良かったかなとも思ったが、もう後の祭りであった。

 手術後の回診で野中氏は、「2mmの厚みの腸から1mm剥ぎ取っただけです」と普通に話す。ポリープのほんの一部も残さないために、直径3cm以上の範囲で、薄いポリープを周りからすべて剥ぎ取ったのだという。