戦後、日本の製造業は品質を重視する経営を推進し、高いグローバル競争力を実現して飛躍してきた。こうした日本の品質関連の取り組みを一貫して支えてきたのが「デミング賞」で知られる日本科学技術連盟(以下、日科技連)だ。ところが、自動車関連や電機分野でリコールが相次ぐ中、日本メーカーの品質が揺らいでいるとの指摘が目立っている。
 日経テクノロジーオンラインは、日科技連が主催する「第100回記念 品質管理シンポジウム」(2015年6月5~6日)が開催されるに当たり、日本の品質管理に携わってきたキーパーソンのインタビュー記事を掲載する。今回はトヨタ自動車の技監で、日科技連の理事長である佐々木眞一氏のインタビュー(下)をお届けする。(聞き手は山崎良兵、吉田勝)

――トヨタ自動車(以下、トヨタ)も、2009~2010年に大規模なリコールへの対応を迫られました。その後、品質向上の取り組みに一層力を入れてきました。ハイブリッド車に代表される電動化の加速や燃料電池車(FCV)といった新技術への挑戦など、ものづくりのハードルが上がる中で、いかにして品質を高めていっているのでしょうか。

佐々木眞一氏
ささき・しんいち:トヨタ自動車技監/日本科学技術連盟理事長 1970年、北海道大学工学部機械工学科卒業。同年トヨタ自動車工業株式会社(現トヨタ自動車)入社。2001年トヨタ自動車取締役・広瀬工場工場長。2003年同社高岡工場工場長。2005年同社専務取締役。2009年同社取締役副社長。2013年同社相談役・技監。 撮影:栗原克己

佐々木氏 品質に関する取り組みには、手ごたえを感じています。FCVを例にとると、ハイテクの部分は実はすごく限られています。「偉大なるローテク」といえる技術も多く使っています。例えば、燃料電池の発電部分には印刷技術を応用しています。薄い膜に対して電極に使う触媒を均一に塗って性能を出すのですが、厚く塗るのと性能が高くなるもののコスト高になります。分子レベルで薄く均一に印刷できるかが大事で、その技術は昔から存在していました。それをいかに極めるのか。ローテクですが、技術的には大変重要です。

 水素を高圧で貯蔵するタンクの気密性も同様です。世の中では高圧タンクが広く使われていますが、生産性を高めて1個当たりの生産スピードを上げる。炭素繊維を樹脂で固めたものを巻き付けていますが、正確に均一に速く生産する工夫が問われます。

 ハイテクの部分では、電極に使う貴金属が少なくても、発電量が下がらないようにする必要があります。ありとあらゆる物質の組み合わせを試して化合物を開発するのは、すごくハイテクです。

 偉大なるローテクと、英知を結集してだれもやったことのないものに挑戦するハイテクを分離して考えるようにしています。職人芸には、若くてチャレンジ精神旺盛な人と、手で触っただけでミクロの段差が分かるような50代の人が力を合わせて取り組んでいます。本当に新しい技術領域、誰も見たことがないものを考え出すのは非常に難しいことです。人材という意味ではトヨタだけではなくて、世界中にいるすごい人とコラボレーションすることを進めています。

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