どんどん更新されるマニュアル

 「標準を作り、そして変えていく」という全員力で強くなっている代表例が、冒頭で紹介したMUJIGRAMである。1980年に西友(当時は西友ストアー)のプライベートブランドとして誕生した無印良品は、右肩上がりの成長を続けてきた。しかし、創業以来利益を出し続けてきた良品計画が、2001年8月の中間決算で38億円の純損失を計上してしまった(2002年2月の通期決算ではかろうじて黒字に回復)。

 そこで生まれたのが、MUJIGRAMという名のマニュアルである。それまで、商品開発や売り場のディスプレー、接客の仕方などは店舗(店長)ごとでバラバラだったが、チームの実行力を高めるためにそうしたノウハウをマニュアル化したのである。

 “マニュアル人間”が増えるのではないかという懸念もあったが、それは杞憂に終わった。MUJIGRAMのすごいところは、どんどん更新するところにある。全13冊、1683ページから成る膨大なマニュアルに対して、ある年には約2万件の改善提案が出され、そのうち443件が実際に反映された。良品計画代表取締役会長の松井忠三氏は、「マニュアルは完成した瞬間から陳腐化が始まる。だから常に最新化しなければならない」とテレビ番組で発言している。

良品計画の業績推移
MUJIGRAM導入後は業績が伸びている(同社の決算資料を基に筆者作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 これは、メーカーの設計にも全く同じことが当てはまる。多くの企業で、昭和50年代に作成された手書きの設計基準書や設計マニュアルが1度も改訂されていないのをよく目にする。性能計算のための安全係数や部品選定の基準は、当時の材料品質、鋳物精度、ボルト緩みなどを前提にして作られているが、30年も経てば見直すべきである。だが、実際には基準そのものがアンタッチャブルな存在になっていて、見直そうという動きが見られない。